「エド、膝枕してあげる!」
「…え、良い」
「遠慮しないで良いのよ?」
「いや、遠慮とかそういうんじゃなくて、ソレ」
「最近、耳掃除してないでしょ。ついでにやったげる」
「してるしてる、ちょうしてる」
「嘘、見てない」
「…だって、お前の怖ぇんだよ!!」
「この前のはちょっと失敗しただけよ!」
「そのちょっとの失敗で、鼓膜が破れるかと思ったわ!!」
ちょこおっと痛くしたくらいで泣きごとなんて!
拗ねて膝を抱えていたら、反対にやってやるって伸びてきた腕。
そうね、たまには良いかもしれない。
子猫が甘えるように、君の膝へと寝転んだ。
[5回]
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「あのね、夢を見たの」
「夢?」
「すっごく倖せな夢。嬉しくて、泣いてしまいそうな夢」
「どんな?」
「それが覚えていないのよ、でも倖せだったわ」
「へぇ」
「だからね、そのときにエドが隣に居てくれたらって思ったの」
「ウィンリィ?」
「あたしの夢の続きはエドが良い」
「…莫迦」
「莫迦じゃないもん」
「莫迦だよ。オレは、夢じゃなくて現実だ」
そっと頬を包む両手が優しくて、あたたかくて。
触れ合った額が痛いほどに熱を帯びる。
君が嘘じゃないのなら。
君が夢じゃないのなら。
あまく、あまく、チョコレートみたいにとろけそうなキスをあたしに頂戴?
[13回]
「ウィンリィさん、お願いがあるんですけども」
「なによ、気持ち悪い」
「気持ち悪い言うな」
「エドが下手に出るときは下心アリのときだもん」
「下心て」
「やーらーしーいー」
「やらしくないっ!」
「で、結局何なのよ」
「それ」
「どれ?」
「オレの服を勝手に着るなっつー話だ」
あぁ、コレ?と大きめのニットの袖を引っ張る。
気付いたらセーターだの、カーディガンだの。
その癖こっちがショールだけでも借りたら怒る理不尽さ、冬場は特に要注意。
[7回]
「ウィンリィ、ちょっとこっち来い」
「なになに?」
「お前、アルにいらんこと言ったろ」
「言ってない」
「う・そ・つ・けっっ」
「嘘じゃないもんっっ」
「さっきアルから色々言われたんだぞ!」
「色々って何よう!」
「いっ、色々は、色々だ…ッ」
「言ってくれないと分かりませーんっ」
なんとなく想像は出来るけど。
君が聞いたそれって過分に脚色されてると思うわ、多分。
照れる君が可愛くて愛おしくて、もうちょっとだけ意地悪させて?
[4回]
「兄さんって、ウィンリィが喜ぶようなこと言ってくれる?」
「例えばどんな?」
「可愛いとか、愛してるとか」
「あ、あい…っ?!」
「言わないの?」
「エドが言うわけないじゃない!!」
「あはは、やっぱり?」
「でっ、でも」
「うん」
「ときどき…嬉しいこと、言ってくれるのよ?」
可愛いとかじゃないんだけどね!
耳まで真っ赤にして弁解する幼馴染が可愛くて。
空気を読まずにリビングにふらりと顔を出した兄が、
意味ありげな笑みを浮かべた僕に嫌な予感を覚えた頃にはもう遅い。
[7回]
「寒いさむーいっっ」
「おかえり。買い物行ってたのか」
「うん、ただいま。雪降ってきたわよ」
「ばっちゃんがキッチンでホットミルク作ってたぞ」
「あ、貰って来ようかな。エドも要る?」
「要るかッッ!」
「ばっちゃん、あたし甘いのが良いー!」
ふわりと漂う甘い香り。
これがあの白濁色の飲み物でなければどんなに良いか。
カップに口をつける君があんまり倖せそうに微笑うから、
零れそうになった苦情を飲み下す。
[6回]
「おい。顔、赤いぞ」
「いつも通りよ」
「嘘言え、またお前寝てないだろ」
「何でそんなこと知ってんのよ、まさか覗き…?!」
「するか!!」
「これくらい大丈夫なんだから」
「大丈夫な奴は、そんなだるそうな顔してマセン」
「だるそうじゃないもん」
「…とりあえず、これを飲め」
「普通の水でしょ?」
「お前の飲んだその水、塩ごっそり入れたんだけど平気そうだな」
「う…嘘…っ」
「味も分からなくなってんじゃねぇか!ばっちゃーーーんっっ!!」
「やだ!駄目!注射やだぁっっ!!」
「やっぱりソレか!!」
注射が嫌だとか、お前は幾つだ!!
涙目でお願いされたって駄目なものはだ………っ駄目だ駄目だッッ!!
一目散に逃げようとした幼馴染の腕を掴んで肩に担ぐ。
[7回]
「エド、髪結ったげる」
「やりたいのか」
「やりたいのよ」
「おかしな頭にしないなら可」
「まかせとけー!」
「ちょう不安なんですけど」
「不安なんて無い無い。ささ、前向いて」
「鏡!手鏡希望!!」
「そんなの後にしてよぅ」
こっちの嫌な予感、ガン無視で嬉しそうに髪を梳く。
優しげな細い指が何度も耳の後ろを擽った。
その手が心地良くて、もう少し触れていて欲しいと願ってしまった。
[7回]
「…んっ」
「動くな」
「や、くすぐったい」
「やりにくいだろ」
「分かってるけど…痛っ、そこダメぇ…っ」
「ちょ、待て、上手く入らね…」
「んンっ、耳元で喋らないで…」
「…つぅか、さっきから妙な声出すな!!」
「だってエドがうまくやらないからでしょ!!」
「だったら両手塞がってるからピアス着けろとか言うな!」
「今、手がすんごい冷たいんだもん~っっ!!」
証拠だとばかりに、背中に入れられた手に飛びあがる。
心臓止まったらどうしてくれる!
気にせずピアスの定位置を確認すると、ありがと、ととろけるようにはにかむ彼女。
別の意味で止まりそうになった心臓が、思い出したように早鐘を刻む。
[8回]