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最遊記外伝 7

ひとつ、ひとつ、もうひとつ。
仄かに灯る花灯り。
嗚呼、嗚呼、嗚呼。
小さな獣の慟哭に、灯る炎が揺らめいた。
在る筈だったぬくもりが。
在る筈だった未来が。
在る筈だった約束が、音を立てて崩れてく。


『下界の桜の下でまた会おう』


指切りしたのは誰だった?
薄れた記憶に漂う残滓。
もう誰の為に泣いているのかすら分からない。


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最遊記外伝 6

「諦めないって決めた」
「えぇ」
「逃げないって決めた」
「おう」
「生きるって、決めたんだ」
「あぁ」


「なのにどうして」


「どうして」

「どうして」

「どうして」



「どう、して…?」




どうしてこの手には魂を縛る呪以外、何一つとして残らなかった。
溢れる涙すら、明日には忘れてしまうのだろう。
覚えた痛みすら、明日には無かったことになってしまうのだろう。

忘れないと叫びながら、忘却の底へと堕ちて行く。

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最遊記外伝 5

「ほら、悟空」
「わわっ」
「こっちだって」
「待…っ」
「なぁ、早く」
「え?」
「俺を」
「なに、聞こえ…」


「忘れて、いいよ」



曖昧な記憶の中で、桜吹雪が視界を覆う。
厭だと叫ぶ代わりに響く咆哮。
取り戻すその日まで続く痛みが宛てもなく、彷徨う。

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最遊記外伝 4

「ゆき」
「あ?」
「みたいだ、なー」
「雪?」
「桜の、はなびら…吹雪」
「桜吹雪」
「へ?」
「って言うんだ。覚えとけ」
「うん、わかった。覚えたー!」
「ほー、来年聞くからな」
「何だよ、もー!」


ごめんね。
ごめんね。
ごめんなさい。
溢れ出す感情に名付けられたのは、根拠のない切なさと痛み。
今年も過ぎ行く雪の季節に怯え、泣いた。

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最遊記外伝 3

「消えないよね」
「悟空」
「皆、居なくならないよね」
「…お前がそう、望むのなら」
「絶対、約束だよ」
「あぁ、だから」


名前を呼ぼうとして、全ての景色が闇に染まる。
忘れて良い、と彼が笑った。
理由さえ分からないまま、幼子は声が枯れるまで―――泣いた。

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最遊記外伝 2

「あ、蛍!」
「本…写真集か?」
「天ちゃんとこにあった」
「ほー」
「金蝉、見たことある?」
「無ぇな」
「俺ね、あるよ。夜にふわってした光でぶわーっていっぱいになるんだ」
「へぇ」
「な、な、金蝉。夏になったら見に行こう?天ちゃんと捲兄ちゃんも一緒に!」
「…誰かさんが仕事の邪魔をしなくて、暇が出来るんだったらな」
「何だよ、ソレー!!」


賑やかしく喚く幼子に苦笑が漏れる。
ゆびきりを知らない小さな指が服の裾へとしがみ付く。
果たされないだろう約束がまたひとつ、増えた。

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最遊記外伝 1

「…金蝉」
「何だ」
「天ちゃん」
「はい?」
「ケン兄」
「おう」
「俺、忘れないから―――皆が忘れても、忘れないから」


忘れない、忘れたくない。
戒めは昏く、深く。
強く願った故に、忘却こそが幼子の罪咎。

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