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鋼の錬金術師 92 (未来)

「あたしとしてはエドにリードしてもらいたいワケなのよ」
「…ソウですか」
「いつもあたしがお願いしてばっかりなんだもの」
「そっ、そん…」
「酔ったときくらいしか積極的になってくれないし」
「…は?」
「え?」
「酔ったとき、が、なに…?」
「…覚えてないの?」
「なに、を…?」
「……………」
「……………」
「……内緒」
「ちょっ、オレ何したんだよ!?おい!!」
「しーらなーいっ」



忘れちゃったこと、せいぜい後悔すれば良いんだわ。
あーんなことやこーんなことしてるんだから!
青くなったり赤くなったり、困ってる君の隣で舌を出す。

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鋼の錬金術師 91 (未来)

「もしもし、ウィンリィさん?」
「はいはい、エドワードさん?」
「何でオレの部屋でお茶してんの」
「あんたがお茶の時間に降りてこないからでしょ」
「んなこと言ったって、仕事してたし」
「適度に休憩取った方が効率上がるんだから」
「休憩ねぇ」
「何よう」
「ウィンリィ」
「ん?」
「ベッドに座るな、別の休憩取るぞ」



スパナで殴られるかと思ったけれど、真っ赤な顔して馬鹿と言われた。
悪かったな、こっちは仕事続きで欲求不満なんだよ。
近付いて、ぎゅっと目を瞑った彼女に触れるフリしてカップを受け取る。

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鋼の錬金術師 90 (未来)

「おなかすいた」
「…はぁ」
「おーなーかーすーいーたー!」
「食えば良いだろ!」
「エド、何か作って」
「オレかよ」
「この前のボロネーゼおいしかった!」
「材料無ぇっつの」
「アルだったら作ってくれるのにな…」
「…アルを引き合いに出したって作らないからな」
「けちー!」



仕方なしにキッチンのリンゴに齧り付く。
全部食べ終わった頃に、キャラメルみたいな甘い香り。
卵とミルクと砂糖を並べて、君と半分フレンチトースト。

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鋼の錬金術師 89 (未来)

「エドの手、好きよ」
「手?」
「前に、あたしの手は生かす手だって言ったでしょ」
「あぁ」
「だったらエドの手は生み出す手ね」
「錬金術の話か?」
「それも、だけど」
「他に何かあったっけ」
「エドが触れてくれると嬉しいの」
「は、イ?」
「嬉しいって気持ちが生まれる手、だわ」



恥ずかしいこと言うなって顔して睨まないでよ。
睨んでる割には目元が赤くて、ちっとも怖くないんだから。
ぬくもりが生まれる手、優しく触れる手。
君の不器用な手のひらに愛おしさが込み上げる。

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鋼の錬金術師 88 (未来)

「………」
「………」
「………ウィンリィ、何してんの」
「なっ何って!?」
「さっきから、何か言いたげにじっと見てんじゃねぇか」
「…エド、も、さぁ」
「オレ?」
「やっぱ、何でもない!」
「は?」
「でも、えっと、あの」
「ハッキリ言えよ、気持ち悪いな」
「エドも、男なんだし、って、ね?」
「だから何だ!」
「………………………は、裸エプロンとか、好き、なの?」
「…お前にソレを吹き込んだ奴を今すぐ教えろ」



パニーニャがね、男は皆そういうのが好きなんだよって。
言いながら、何故オレと距離を取る。
見るからにどん引きしてるのは分からないでもないが、
オレにそういう趣味は一切無いからな!!

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鋼の錬金術師 87 (未来)

「濡れたぁ!」
「傘持って行かなかったのかい」
「だって出るときは晴れてたんだもの」
「ラジオで午後から雨だって言ってたのに」
「どっかで電話借りて、ウチに連絡すりゃ良かったじゃねぇか」
「だって、ちょっとの距離だったし」
「『だって』『だって』じゃあーりーまーせーんーっ」
「いひゃい、いひゃいっ!!」
「風邪引いたって看病してやらねぇいからな!」
「そういうときは、ぬっくぬくにあっためてよう!」
「どうやってだ!」
「心配したならしたって言えばいいのにねぇ」



つねられた頬を抑えて涙目で抗議。
どうやって、なんてここで具体的に言っても良いの?
お風呂を指差す君の手を取り、一緒に入ろって誘ってみる。
馬鹿なこと言ってんなと、ふわふわのバスタオルでくるまれた。

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鋼の錬金術師 86 (未来)

「寒い!」
「そうです、ねー」
「冷たっ!服の下に手入れないでよ!!」
「ウィンリィさんがいつもやってることですぅ」
「セクハラー!」
「てめ、今度お前が同じことやったらオレもセクハラって叫ぶからな!?」
「あたしのはスキンシップだから」
「ずっりぃ!」



ぽすんと抱きついてきた彼女の背中に腕を回す。
悪戯ついでに冷えた手を突っ込めば、悲鳴を上げて飛び上がる。
ぎゅうっと抱き締めればあたたかい君の、はちみつ色が視界いっぱいに広がった。

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鋼の錬金術師 85 (未来)

「エド、アルと喧嘩でもしたの?」
「してねぇよ」
「さっき大声出してたじゃない」
「…違う」
「ふぅん?」
「……………ッッ」
「…何か隠してるわね!!」
「だー!気にすんな!!」
「気になるわよ!白状しなさい!!」
「出来るか!!」
「ほらやっぱり!!」



嘘を吐くのが下手だって、そろそろ自覚した方が良いんじゃない?
こちらを絶対に見ようとしない君の頬が真っ赤に染まる。
渾身のポーカーフェイス、どうせ長続きはしないんだから。

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鋼の錬金術師 84 (未来)

「おはよ、アル」
「おはよう」
「朝食、もうちょっと待ってろな」
「昨日暑かったね」
「そうだな、オレら窓開けて寝たし」
「…兄さん、あのね」
「ん?」
「声が駄々漏れ」
「………………………は?」
「夜、窓開けたんだよね、僕も。すぐ閉めたけど」
「…ウィ、ンリィ、に、は…?」
「今借りてる本、ずっと欲しかったんだよね」
「ばっ、あれ絶版本だぞ!?」
「ウィンリィ、おはよう」
「おはよ、アル。朝から仲良いわねぇ」
「仲良いのは僕じゃなくて、ウィンリィだと思う」
「えぇ?」
「どれでも好きな本持ってって良いぞ、アルフォンス!!!」



弟に借りを作ったが最後。
知られたくないことは徹底的に隠し通せ。
身を以て知ってるくせに、いつもどこかでバレるのは何故だろうかと首を傾げる。

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鋼の錬金術師 83 (未来)

「エド、雨降ってきた」
「明日も雨だっけ」
「今夜から2日は降るって天気予報が言ってたわ」
「気だるそうだな」
「雨の日ってすごく眠たくなるの」
「そこ、オレのベッド」
「うん」
「分かってる?」
「分かってる」
「ウィンリィ、さん?」
「おやすみなさーい」



いや、だからそこオレのベッドなんですけど。
ごそごそと毛布にくるまったと思ったら、直後にすやすや聞こえる寝息。
肌寒さに理由をつけて、彼女の隣で息を殺して目を閉じる。

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