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鋼の錬金術師 122 (未来)

「エド、インク持ってない?」
「お前持ってんだろ」
「切れちゃったの」
「補充しとけよ」
「下に行けばあるんだけどね」
「取って来い!」
「隣の部屋のが近いでしょ!けちけちしないでよ」
「横暴な」
「インク代にコーヒー入れてあげるから」
「結局、下に降りるんじゃねぇか。しかもソレ、自分の用事が終わったあとだろ」
「よくお分かりで」



男が細かいこと言うんじゃないの。
インクのストックひとつ貰って、ドアへ向かって踵を返す。
まだ不満そうな君の頬にキスをひとつ落としたら、
真っ赤な顔して怒鳴られた。

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鋼の錬金術師 121 (未来)

「…増えた」
「体重?」
「違うわよ馬鹿!!」
「仕事量?」
「分かってるなら、体重とか言わないで頂戴」
「冗談だったのに殴らないで下さい」
「そう、仕事が増えてるの」
「ありがたいじゃねぇか」
「そう、なんだけ、ど」
「まずいことでもあるのか?」
「…エドと、一緒に居る時間、減っちゃうなぁって」



ずきずき痛む頭とか、いじってる銀色の凶器とか。
そういうの全部見えてるのに、どうして可愛いとか思えるんだ。
減った時間を埋めるように、きつく、きつく、抱きしめる。

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鋼の錬金術師 120 (未来)

「あれ、ここに置いといたコート知らねぇ?」
「洗ったけど」
「マジで!?」
「洗っちゃ不味かった?」
「ポケットにもの入れてたんだよ!」
「あぁ、コレ?」
「そう、それ…それ―――ッッ!!」
「大声出さないでよ、びっくりした!」



いや、だってそれ、お前にやるつもりだったんだ。
ついでに言うと、形ばかりのエンゲージリングだったりするんですけども。
自分の迂闊さに頭を抱えれば、胡乱気にこちらを見やる彼女の視線が突き刺さる。

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鋼の錬金術師 119 (未来)

「エド、休憩しよ?」
「今、何時?」
「2時過ぎたとこ」
「もうちょっとして降りる」
「ばっちゃんが買って来たシブースト、無くなっても文句なしね」
「待て待て待て!ちょっと待った!!」
「早い者勝ちー!」



騒がしい音を立てて階段を降りれば、呆れた顔してため息吐かれた。
だってさぁ!こいつ絶対冗談じゃないぞ、今言ったの!!
いい年しておやつの取り合い、昔から変わらないやりとりにほんの少しだけ安堵する。

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鋼の錬金術師 118 (未来)

「エド、エド、これどう?」
「えー」
「何よ、その反応」
「上に何か着るのか、ソレ」
「このままだけど?」
「薄着過ぎねぇ?」
「いつもこんなものじゃない?」
「前から思ってたけど、お前露出面積広い」
「だって、エドしか居ないし」
「は?」
「寝るとき用」



あの、寝る、ってそのままの意味デスカ。
薄手の生地のチュニックが、ふわりと揺れて翻った。
飛び付いた君を抱き止めて、甘いあまい誘惑に溺れる。

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鋼の錬金術師 117 (未来)

「あーあっ」
「何?」
「別にぃ」
「別にってことは無いだろ」
「エドはもしかして、もしかすると、もしかするのかもかもしれないなぁって」
「はい?」
「べーつーにーぃ」
「分かんねぇ奴」
「分かんなくて結構ですぅ」
「そうだ」
「何よう」
「誕生日欲しいものあるか?」




あぁ何だ、やっぱりソレか。
どうせオレが忘れてるとでも思ってたんだろ。
生まれたときからの付き合いなんだ、忘れる方が難しい。

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鋼の錬金術師 116 (未来)

「パンケーキ」
「クレープ」
「腹に溜まらねぇ」
「クリームたっぷりなのが良い」
「パンケーキに乗せれば良いだろ」
「カロリーが大変なことになるじゃない」
「どっちもどっちだと思うけどな」
「エドは乙女心を分かってないわ!」
「体重と甘味が乙女心か」



色気のない悲鳴が上がって殴られる。
とりあえず、体重気にしてるのはよく分かった。
結局折れて、薄く延ばされた元パンケーキの生地。

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鋼の錬金術師 115 (未来)

「エド、ここにリンゴがあります」
「まあ、あるな」
「ひとり一個ずつ食べるとしたら、いくつ要るでしょう」
「オレとお前とばっちゃんで3つ?」
「不正解」
「デン?」
「デンは食べないでしょ、正解は4個!」
「は?」
「うん」
「え?」
「ね」
「…………え!?」



うまく働かない思考回路をフル回転。
それって、つまり、そういうことか!?
3人しか居ない家に4個の林檎、近い未来に増える椅子。

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鋼の錬金術師 114 (未来)

「ブレスレット?」
「お前、あんまり着けないなと思って」
「持ってないワケじゃないのよ」
「知ってる」
「いつも着けるには、ちょっと邪魔だし」
「じゃあ、やっぱりネックレスのチェーンか…」
「へ?」



数日後、君から貰った小さな石の付いたネックレス。
傷が付かないように、仕事の邪魔にならないように、指輪を外してくぐらせた。
小さな君の優しさが、嬉しくて、嬉しくて、くすぐったかった。

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鋼の錬金術師 113 (未来)

「あ!」
「…あ?」
「エド、時間大丈夫?」
「時間…うお!!?」
「10時には出ないと間に合わないって言ってたよね」
「何でもう9時半になってんだ!!」
「そりゃ、目覚まし鳴らなかったから」
「無能にねちねち厭味言われる!!」
「顔くらい洗って行きなさいよ~、朝食は?」
「朝飯要らねぇ!いってきます!!」
「いってらっしゃーい」



あら、起こしてくれても良いだろとは言わないのね。
もしかしたら後で言われるかもしれないけど、
あたしも寝てたんだから仕方ないじゃない。
寝ぐせの付いた髪、慌てた後ろ姿にこぼれた笑みを噛み殺す。

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