「見たの見られたの、エドは騒ぎすぎだと思うの」
「お前は騒がなさすぎだと思うの」
「あんただって、あたしの着替え見たことあるくせに」
「あれは不可抗力だ!!」
「ノックして入らないから、そういうことになるんですぅ」
「覗くつもりなんざ無かったよ!」
「不可抗力だって言うのなら普通、顔そらすとか、すぐに出て行くとか」
「し、仕方ない、だ、ろ」
「何が仕方ないのよ」
「…見たいって思わないワケ、ない、じゃんか」
それってつまり、見たいってこと?
だからって見せたらぎゃーぎゃー騒ぐくせに。
ちっとも分からない男心、境界線を越えたら少しは理解出来るかしら。
[9回]
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「泡だらけ~」
「ちょっとウィンリィさん」
「はーい」
「オレ、今全裸なんですけど」
「知ってるわよ?」
「…髪洗うの楽しい?」
「ヒトの洗うのは楽しいわ、デン洗ってるみたい」
「オレはデンじゃない…」
「細かいこと言わないでよ」
「頼むから、風呂入ってるときに乱入するのはやめてくれ!」
「何で?」
「恥ずかしいから」
「嘘だぁ!」
「もうオレ、お婿に行けない」
「大丈夫大丈夫、あたしが貰ってあげるから」
シャワーを浴びていたら、突然開いた扉。
新しく買ったシャンプー片手に、洗ってあげると着ている服の袖を捲る。
彼女に裸でこられても困るけど、こっちが裸でも困るんだ!
最後の抵抗に腰にタオルを巻いてはみたものの、
結局されるがままにうなだれる。
[11回]
「あ、起きた」
「…なにやってんの、お前」
「エドが起きるの待ってたの」
「そこで?」
「ここで。あんた寝言言ってたわよ」
「げ、マジ?」
「そんで、コレ」
「コレ?」
「そう、コレ」
「…何でオレ、お前の手握ってんの?」
「そこはあたしが訊きたいとこなんだけど」
無意識に握ったにしては、しっかり握りすぎだと思うんだ。
お前も嫌ならさっさと振りほどけば良いだろ。
言ったら、別に嫌じゃなかったからの返事。
それはどういう意味なんだと、問いかける前に離れた手のひら。
[11回]
「…えど、ブランケット全部取らないで」
「ん、あー…わり…」
「寝てた?」
「多分」
「あたしも」
「ついでに起こすな」
「もちょっと広いの買おうよ」
「そだなー」
「さむい」
「なら、こっち来い」
「また食べられちゃう」
「食わねぇよ」
「ほんと?」
「…多分」
言いながら、どこ触ってるのよっ。
確かに絶対とは言わなかったけど。
君の触れた場所からやけどしちゃうみたい。
ふたり分のぬくもり、ふたり分よりちょっと小さなブランケット。
[12回]
「エド、ごめんなさい」
「…謝られるようなこと、オレされたっけ?」
「あのね」
「うん」
「えっと」
「何だよ」
「駄目、やっぱり言えない!!」
「は!?何!?オレ、何されたの!!?」
この前の理由の分からない上機嫌とか。
今回の理由の分からない謝罪とか。
ほんっとにこいつの頭の中、見てみてぇ!!
一生振り回される気がするのは、予感じゃなくて絶対事項。
[8回]
「兄さん、ウィンリィ機嫌良いね」
「何故オレに言う」
「兄さんが何かしたのかと思って」
「いや…?」
「心当たり無いの?」
「無い、はず」
「ウィンリィ、良いことあった?」
「えへー、分かる?」
「うん」
「あのね、エドがね」
「オレ?!」
「やっぱり何でもなーいっ」
「…兄さん?」
「いやいやいや!?」
ほんとに覚え無いぞ!?
オレ何かしましたっけ!?
嬉しそうに歌を口ずさむ彼女が突拍子もないことを言い出しそうで、
気が気でない一日の始まり。
[11回]
「エド、一緒にお風呂入ろ!」
「嫌だ、って何回言ったら分かるんだ、お前は!」
「だって、本気で嫌がって無いし」
「んなッッ!!?」
「あんたって嘘吐けないわよねぇ」
「これは嘘とかそんなんじゃなくてだなぁ!!」
「良いもん、アルと入るから」
「ちょっと待ったぁぁあああああ!!!」
入るワケ無いだろ、本気で止めるなよ。
たまに里帰りしても、変わらない兄と幼馴染の痴話喧嘩。
このふたりがくっ付いて、安心して見ていられるようになるまであとどれくらい?
[9回]