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鋼の錬金術師 132 (未来)

「ッ、うわあああ!!」
「あんたが悲鳴上げること無いでしょ!」
「だっ、おまっ、血!!」
「ちょっと指切っただけだってば」
「ちょっと、でそんなに血が流れるかよッ」
「傷自体は大したことないわよ」
「とっ取り合えず止血して、そんで…!」
「エド、慌てすぎ!」



適当に洗い流したら、ガーゼと包帯でぐるぐる巻き。
大袈裟ね、これじゃ仕事が出来ないじゃない。
心配してくれる君が嬉しくて、憎まれ口で聞こえないように言ったありがと。

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鋼の錬金術師 131 (未来)

「あれ、デン知らない?」
「さぁ?外じゃねぇの」
「洗おうと思ったのに」
「察したんじゃね?」
「予防注射のときが一番往生際が悪いのよ」
「まぁ、デン頭良いしな」
「エドは往生際悪いけど、すぐにつかまってくれるのに」
「デンと比べんなッ」



揺れてる尻尾を見つけ、全速力で追っかける。
捕まえ切れなくて彼と交代。
子ども捕まえるのもこんな感じかしら、ぶくぶく泡で愛犬をごしごし洗う。

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鋼の錬金術師 130

「サンダルの紐切れちゃった~」
「あーあ、ぶっつり」
「気に入ってたのにぃ」
「直してやろうか?」
「んー…良い」
「気に入ってたんじゃねぇの?」
「どんなものだって、いつかは壊れるわ」



本当は知っている、必ずどんなものにも終わりは来るって。
壊れないように、要らなくなるその日が来るまで長く、長く。
彼の右腕、代わりの鋼。

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鋼の錬金術師 129 (未来)

「ウィンリィ、どれにする?」
「エドがこっち頼んで、あたしがこっちで半分しよう!」
「選択権はナシか」
「別に何でも良いくせに」
「そりゃそうだけど」
「甘いものが食べたい気分」
「オレ、腹減ったから飯が良い」
「デザートにすれば良いじゃない、はい決定!」
「お前はそういう奴だよな」



最後はこっちが折れるって分かってて言ってるだろ。
ため息ひとつ、諦めひとつ。
林檎のクグロフ、紅茶のシフォン、君の笑顔のおまけ付き。

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鋼の錬金術師 128 (未来)

「あったま痛い」
「熱は無ぇぞ」
「エドの体温が高過ぎる所為で分からないんじゃないのぉ」
「阿呆なこと言ってないで、薬でも飲んどけ」
「甘いシロップが良い」
「そんな頭痛薬聞いたこと無いわ」
「じゃあ口移し!」
「何が『じゃあ』だッ」



真っ赤な顔して怒鳴らないでよ。
だから、頭に響くんだってば。
苦い薬を飲み下したら、甘いキャンディ放り込まれた。

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鋼の錬金術師 127 (未来)


「あれ?」
「ん?」
「これ、エドの?」
「あーオレのだ」
「栞なんて珍しいわね」
「付箋やらメモ用紙やら挟んでたらゴミだらけになったんだよ」
「そういう理由なの」
「他にあるか?」
「願掛けでもしてるのかと思った」
「は?」
「四つ葉のクローバーだもの、この押し葉」
「お前が居るのに、今更倖せの願掛けしても」



言って、しまったって顔。
たまに言ってくれる嬉しい言葉。
そっぽを向いた君に後ろから抱き付いて、にやけた口元隠してみた。

 

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鋼の錬金術師 126 (未来)

「出た!」
「うを!!?」
「出たのよ、エド!!」
「…何が」
「蛾」
「蛾?」
「おっきいやつ!窓開けたときに入って来たのっ!!」
「追い出せば良いだろ」
「ど…どこ行ったのか分かんなくなっちゃった…」
「お前の部屋ごちゃごちゃしてるからなぁ」
「探すか、一緒に寝てくれるか、どっちが良い!?」
「オレ、どうせ徹夜だからそこに寝とけ」
「ドア開けたら死骸があったらどうしよう」
「そのときは片付けてやるから」
「絶対よ?絶対だからね!?」
「へいへい」



ゴの付くアレならともかく、虫くらいで騒ぎ過ぎだろ。
ブランケットに潜り込んで、すぐに聞こえる寝息。
こっちで寝ろは失敗だったかな、こちらまで眠たくなってくる。

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鋼の錬金術師 125 (未来)

「兄さん、辞書諸々と部屋とベッド貸して」
「追い出す気か!」
「寝るとこくらい、他にあるだろ」
「…診療所のベッド借りるかな」
「あたしのとこで寝ればいいじゃないっ」
「お、襲われる」
「あたしのこと、何だと思ってるのよう」



何って、そりゃ…まぁ、うん。
そんなことより、ひとの枕を勝手に持って行くんじゃ無ぇ!
弟には鍵を掛けられ締め出され、理性と戦いつつ彼女の部屋へと足を向ける。

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鋼の錬金術師 124 (未来)

「おい、手ぇ空いたぞ」
「じゃあ、庭に水撒いておいて」
「へーい」
「ついでに肩揉んでくれると嬉しいなぁ」
「あぁ、私も頼もうかね」
「ばっちゃんはともかく、お前は後で交代だからな!」
「えー!」



片手にスパナ持ったまま不満を言うな。
いつソレが飛んでくるか、気が気じゃないんだ。
庭に水撒き、シャワーで虹が浮かんだら君が笑顔で覗き込む。

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鋼の錬金術師 123 (未来)

「エド、もちょっとそっち寄って」
「オレの寝床なんですけども」
「ひとりで寝るより、ふたりで寝た方があったかいでしょー」
「お前が壁際来いよ」
「あんたのが寝相悪いじゃない」
「だからってベッドから落ちるかッ」
「あ!」
「あ?」
「エドがあたしを抱っこして寝れば良いと思う!」
「却下!!」



隣で寝るんだから、上に乗ろうが大して差は無いはずよ。
必要以上に触れない君に、わざと寄り添ってしらんぷり。
苦情なら明日の朝に聞いてあげる、ぎゅっと目を瞑って告げるおやすみ。

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