「お誕生日おめでとうございます、十代目」
「ありがとう、獄寺君」
「お祝の品とメッセージが届いてますよ」
「うわぁ…毎年のことながら…」
「それだけ十代目が偉大でいらっしゃるんです!」
「あのさ、イタリアではコレが普通なの?」
「普通はボンゴレの次期後継者ともなれば大々的にファミリーで華やかなパーティが開かれるんですが」
「華美が普通なんだ…」
「十代目はあまり好まれないのでこういった形で」
「ありがたいけどやっぱり我儘言ってるんだよね、オレ」
「我儘とは言いませんが、少しずつは出席なさった方が良いかと」
「うん、そうだね。あと何か国語覚えなきゃかなぁ」
イタリア、フランス、イギリス、ドイツ。
近隣諸国は流石に覚えた。
あとは中国、ロシアと何だっけ。
見慣れない国の言葉で書かれた、たくさんのメッセージ。
さて、この中に悪意の籠ったプレゼントがあるだろう。
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「獄寺くん」
「はい、何でしょう十代目」
「そこに居られると、気になって仕方がないんだけど」
「お気になさらず!」
「だから気になるって言っ…まぁ良いや」
「十代目?」
「あと10分でコレ終わらせるから、出してきてくれないかな?」
「喜んで!」
「ありがとう」
扉の前で右往左往。
アレってもしかしなくても艇の良い厄介払い?
言ったところで殴られますよね。
そこに居るよねランボと彼が呼んだのは、逃げようと思った5秒前。
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「で?」
「はい?」
「僕はどれくらい暴れても良いのかな」
「物騒な…」
「協力してるんじゃない」
「じゃあ、正一くんに向こうの戦力ほぼ割いてもらいましょーか」
「その程度?」
「終わったら、メローネ基地に遊びに行って良いですよ」
「面白そうなのが居たっけな…」
あぁ、今から品定め。
敵対勢力のリストはリストランテのメニューじゃないのになぁ。
その先に見え隠れする、まだ誰にも言っていない嫌な予感。
最善の手を最後まで。
臆病なライオンにはどこまで出来る?
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「正直、どう思ってます?」
「無謀だね」
「あ、やっぱり」
「僕はともかく、たかだか中学生に何が出来るって言うの」
「雲雀さんだって子どもだったでしょー」
「もう忘れたよ」
「都合良いなぁ。じゃ、後は宜しくお願いしますね」
「どっちが都合良いんだかね」
それは勿論そっちでしょ、彼は肩を竦めて席を立つ。
もう戻らない部屋を振り返りもせず、空の指を握りしめた。
さよならを告げた唇は、似つかわしくない微笑みを浮かべる。
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「何それ」
「あれ、雲雀さん」
「訊いてるんだけど」
「正一くんに預けようと思って」
「珍しい匣」
「ボンゴレ匣って言うんですよ」
「安直」
「言われると思ったから言わなかったのに」
「で?」
「過去のオレ達に託すんです」
「じゃあ、僕のはとびきり使える奴にしてよ」
「えぇえ?」
「喧嘩売ってる?」
「あの頃の雲雀さんにそんなの渡したら、とんでもないことになると思うんですケド」
「良いじゃない、面白いくらいに暴れてあげる」
「ものすごぉく考えておきます」
冗談みたいに笑い合う。
もうすぐ取り返しのつかない大きな嘘を吐くところ。
未来と世界を彼らに託そう。
ここから手放す、確かな繋がり。
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「始まるね」
「そうだな」
「行くの?」
「決まってんだろ」
「そっか」
「また泣いて『行かないで』とか言う気か、ダメツナ」
「泣いてないだろ」
「ま、その辺りはそろそろ評価してやっても良いな」
「あぁ、そうですかっ」
いつも通りの軽口。
いつも通りの喧噪。
もうすぐ来るのは終焉の序曲。
分かっていながら、オレにはあいつを止めることなんて出来なかった。
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「お前は知っていたんだな、ルーチェ」
「えぇ」
「未来を変えようとは、思わなかったのか」
「思わなかったわ」
「強いな」
「いいえ、違う」
「?」
「残酷と言うのよ」
背負わせてしまった罪を。
継がせてしまった呪いを。
この命はもうすぐ終わる。
続く宿命を魂に刻み、消えやらぬ血脈は流れゆく。
どうか、どうぞ、一縷でも構わない。
その命の先に見えるのが満ち足りた希望でありますよう。
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「シルバーウィーク?」
「そうです!」
「9月の連休?へぇ、そんな風に呼ぶんだ」
「せっかくですし、皆で遊びに行きましょうよっ」
「ハルと京子ちゃん?」
「リボーンちゃんも、獄寺さんも山本さん、お兄さんも」
「クロームも?」
「行って、くれるでしょうか」
「誘ってみなよ、分かんないじゃない」
「はい!頑張ってみます!!」
「遊園地とかで良いかなぁ」
いつ、何が起きても良いように。
どんな未来が綴られても、後悔しないように。
楽しい思い出を、たくさん作ろう。
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「ユニ姫」
「ボンゴレ」
「バルコニーは冷えます、中へどうぞ」
「この城は、何故こんなにも穏やかなのでしょう」
「そのように思って頂けるのでしたら、嬉しいですね」
「血生臭さが届かないのではない、見えないのです」
「私達は争いを好みません」
「変わったマフィアですね」
「そう仰る姫こそ」
「私は、守られているから願うのです」
「願い」
「仲間の無事を、皆が笑い合える日が続くことを」
「そうですね」
「貴方は」
「はい」
「願わないのですか?」
「…願えないのですよ、姫」
もう、とは言わない。
仲間に願いを託すことは出来ない。
託してはいけない。
ここから先は、彼だけが通る血まみれの茨道。
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「こう、さぁ」
「え?」
「大事なもの、ぜーんぶバラ撒いて逃げ出したくなるときがあるなぁ」
「はは、まさか」
「分かんないよ?」
「十代目はなさいませんよ」
「どうして、そう思うの?」
「俺はこれでも右腕ですよ」
「獄寺くんの中では、それで答えが完結しちゃうんだよねぇ」
「いけませんか?」
「あんまりオレを過信しない方が良いよ」
「十代目」
「いつか、裏切るかもしれないから」
「そう、ですね」
「うん」
「だったら俺は追いかけますから、どうぞお逃げになられて下さい」
「追いかける?」
「はい」
「………」
「………」
「…っ、あははっ!逃げ切れる気が全然しないんだけど!」
「それは良かった」
「…うん、ありがと」
真っ直ぐに応えるその瞳に救われる。
ときどき重荷になるけれど、どこまで行っても君なんだね。
分かっているの?気付いていないの?
約束の日はすぐそこに。
オレは絶対に謝らない。
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