「こう、さぁ」
「え?」
「大事なもの、ぜーんぶバラ撒いて逃げ出したくなるときがあるなぁ」
「はは、まさか」
「分かんないよ?」
「十代目はなさいませんよ」
「どうして、そう思うの?」
「俺はこれでも右腕ですよ」
「獄寺くんの中では、それで答えが完結しちゃうんだよねぇ」
「いけませんか?」
「あんまりオレを過信しない方が良いよ」
「十代目」
「いつか、裏切るかもしれないから」
「そう、ですね」
「うん」
「だったら俺は追いかけますから、どうぞお逃げになられて下さい」
「追いかける?」
「はい」
「………」
「………」
「…っ、あははっ!逃げ切れる気が全然しないんだけど!」
「それは良かった」
「…うん、ありがと」
真っ直ぐに応えるその瞳に救われる。
ときどき重荷になるけれど、どこまで行っても君なんだね。
分かっているの?気付いていないの?
約束の日はすぐそこに。
オレは絶対に謝らない。
[1回]
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