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鋼の錬金術師 224

「わ、わ、わっ」
「何やってんだ」
「あー!!ズレた!!もうっ!!」
「で?」
「睫毛をカールさせてたの!」
「睫毛?」
「逆さ睫毛が痛いのよう、んー・・・もうちょっと巻けるかなぁ」
「・・・たまにはおしゃれがどうのとか言えよ」
「一日の殆どが作業場なのに、おしゃれしてどうすんのよ」



ピアス空けたときはリザさんとは雲泥の差とか言った癖に!
ほんと好き勝手言うんだから!
震える右手、左手に鏡、瞼を挟まないように構えたビューラー。

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鋼の錬金術師 223(未来)

「おや、ウィンリィ電話かい?」
「うっ、うん!」
「やっと掛ける気になったんだね」
「えっ何が!?」
「ここ数日、電話の前を行ったり来たり」
「そ、そうだったかしら」
「滞在先を報せて来ていたからねぇ」
「・・・っ!!!」



握り締めたメモ用紙、空で言えるくらいに見つめた数字。
滞在先に居るのかしら?それとも出掛けているのかしら?
ダイヤルを回せないままに過ぎた数日、意を決して受話器を手にした。

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鋼の錬金術師 222

「夕飯はシチュー!」
「ふー、あったまる~」
「兄さん、年寄りくさい」
「あたしゃそんなこと言わないよ」
「ばっちゃんは若いのよ」
「オレだって年寄りじゃねぇ」
「若くはないよね、言葉のチョイスが」
「エド、なんでそんなになっちゃったの」
「オレまだぴっちぴちの15歳!!」



ぎゃあぎゃあ喚く兄を余所に、みんなで揃えたいただきます。
骨の形のビスケットをデンに差し出し、ボクも一緒にテーブルに着いた。
気の置けない家族の食卓、まだ覚えてる野菜たっぷりのシチューの味。

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鋼の錬金術師 221

「眠たそうだな」
「分かる?」
「ふらふらしてるし」
「昨日寝てなくて・・・ふあぁあ」
「と、いうことは」
「あんたの修理は明日から」
「ですよねぇええええ!!!!」



無理して整備してもらいたいとか、そういうんじゃないけども。
階段上る音を呼びとめも出来ずに背中を見送る。
忘れてたと振り返る君の笑顔と、おかえり。

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鋼の錬金術師 220

「にーがーいー」
「あっオレのコーヒー!」
「砂糖入れよう、砂糖」
「飲むのはオレだっつの」
「うりゃっ」
「ミルクまで!!」
「ほら、こっちのがおいしい」
「砂糖までなら我慢出来たのに!」
「あっ、淹れ直すならココアも作って~」
「横暴すぎる・・・」



ココア淹れるならお湯じゃなくてミルクだってば!
そっちのがおいしいのに、どうして分からないのかしら。
砂糖の量だけ子どもの証拠?大人と子どもの境界線。

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鋼の錬金術師 219(未来)

「ここにあった林檎知らない?」
「兄さんが食べてたけど」
「アップルパイ作ろうと思ったのに!」
「あーあ」
「良いわ、エドに買ってきて貰うんだから」
「さっき散歩に行くって言ってたから急がないと」
「エードー!!」


実は僕も食べました、ごめんなさい。
どうせすぐバレるだろうけど、きっと林檎をいっぱい兄さんが買ってくるんだろうね。
甘い甘いアップルパイ、僕達の故郷の味。

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鋼の錬金術師 218

「透明の・・・マニキュア?」
「あたしのー」
「お前、こういうのすんの?」
「仕事中、爪に傷付いたり、割れたりするのよね」
「あぁ、そういう」
「他に何かあるの?」
「いや、うん、良いや」
「何よう」



おしゃれにでも目覚めたかと焦燥感に駆られる。
女だけど、そうじゃなくて。
段々変わっていく距離に募る言い表せない、不安。

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鋼の錬金術師 217

「・・・っと」
「ん?」
「何?」
「いや、さっき」
「さっき?」
「・・・やっぱ、何でもね」
「変なエド」



触れた君の右手が急に離れた気がして頭を上げた。
いつもどおりの君の顔、いつもどおりの君との距離。
首を傾げて瞬きひとつ、くすぐったい感情がひとつ浮かんだ。

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鋼の錬金術師 216

「お、ハンモック」
「ひなたぼっこに良いかなと思って」
「貸して貸して、オレ昼寝する」
「やーよっ、一番はあたしなんだから!」
「お前、今から仕事するじゃん!」
「だから明日使うの!」
「意味分かんねぇ!」
「じゃあ、ふたりで乗れば良いじゃない」
「アル、いくらエドが小さいからって狭いわ」
「今何つった、ウィンリィッ!」



風にゆらゆらハンモック。
幼い頃は三人で昼寝出来たのに、今はこんなに小さく見える。
振り返る日はまだ近い思い出、前を見たらずっと遠い未来。

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鋼の錬金術師 215

「兄さん、足」
「足?」
「捻ったでしょ、見せて」
「これくらい大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないよ、見せて」
「平気だって」
「ウィンリィー!ばっちゃーん!!」
「ばっ、おまッ!!」
「エド!今度は何やらかしたの!!」
「ほら来たー!!」



どうせバレたら叱られるんだから、大人しく治療されたら良いのに。
不慣れな義足スペアでバランス崩して倒れ込む。
真っ赤に腫れた足首、悲鳴を上げた幼馴染に掴まれた右足。

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