「寒いとね」
「うん」
「くっつけるから良いのよ」
「夏だってくっついてくるじゃん」
「あたしが暑いから、やっぱり適度なワケよ」
「あぁ、そう」
「あったかいのが心地良いから、冬が好きだわ」
「へぇ」
「冬が、好きよ」
気付いてる?気付いてない?
冷たくて、指が悴んで、大好きな機械鎧に触れることすら怯むのに。
冬は寒いのにあたたかいの、君が生まれてきてくれた季節。
[5回]
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「やる気出なーい」
「えええ、ちょっとウィンリィさーん」
「電池切れです、ぴーぴーぴー」
「ウィンリィさんの電池は何で出来てるんですかー」
「甘いもので出来てまーす」
「チョコレートひとつでどうですかー」
「足りませーん」
言いながら、もごもごと口を動かして放り出した足。
行儀が悪いとそれを叩けば、反対に軽く蹴って来た。
これはほんとにやる気が無いな、諦めて一緒に転がったソファの上。
[4回]
「エド、ばんそこ!」
「怪我したのか?」
「指先切っちゃった。ちょっと貼りにくい」
「はいはい、貼れば良いんだろ」
「歪んだ!あっ、くっついた!!」
「お前が動かすから!」
「ヒトの所為にしちゃって!!」
「不器用で悪かったな!」
不格好に手当てされた指先に口元が緩む。
ひりりとした痛みはいつの間にか飛んで行った。
お風呂上がったらまた貼り直してね、と渡した数枚の絆創膏。
[4回]
「エド、ほら置きっ放し!」
「あー、悪ィ」
「日記なんて置いてたら勝手に読んじゃうんだから」
「読まれたとこで困ることは書いてませんよー」
「あ」
「あ?」
「女の子の名前!」
「は!?嘘吐け!ちょッ、貸せ!!」
「何でそんなに慌てるのよう!」
「書いてないもん書いてるとか言うからだろ!」
「心当たりあるんだ!!」
「無いから言ってんだ!!」
リビングでぎゃーすか大騒ぎ。
ばっちゃんの雷が落ちるまであと数秒。
適度な会話とスキンシップ、幼い頃から変わらないあたし達。
[6回]
「駄目よ」
「ウィンリィ」
「駄目だったら」
「なぁ、頼むよ」
「だーめっ」
「ほーら見てごらん、あれを尻に敷かれるって言うんだよ」
「あー」
「おいこらアル!うちの息子に何教えてんだ!!」
いつだって泣かせるのは僕らだったけど。
いつだって頭が上がらないのも僕らだったね。
変わらない風景にほっとして、変わったぬくもりに笑顔がこぼれた。
[6回]
「んー」
「ラジオの電波悪いな」
「電波って言うより、多分本体」
「ボクら小さい頃からあったよね、あれ」
「何度も直してるんだけど、そろそろ寿命かなぁ」
「新しいの買えばいいのに」
「随分古いよ?」
「だってあれ、じっちゃんのだもの」
皺枯れた小さな手がアンテナを揺らす。
母が読めもしない錬金術書を開いては閉じていたのとよく似ていた。
直ったばかりの機械鎧に、指の背でそろりと触れたのは何故だろう。
[4回]
「う、わっと」
「おかえり、エド!おふろ?ごはん?それとも」
「・・・整備で」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「手入れしてたのは最初だけってどういうことなの!?ねぇ!!?」
「悪かった!謝るからそのスパナ仕舞え!!」
「もうっ!もうっ!!信じられない!!」
「ごめんなさい!」
「今度やったらちょん切ってやるんだからぁっっ!!」
「何を!?どこを!!?」
連絡はした、が、伝えてない修理の予定。
恐る恐る開いたドアの向こうで嬉しそうに微笑う彼女に突き刺さった罪悪感。
わざとじゃないんだ、ほんとに違うんだ、帰って早々小さな背中に平謝り。
[5回]
「ねぇ、葉。変わらないものを頂戴」
「変わらないもの?」
「心なんて、目に見えないから分からないもの」
「んー」
「・・・冗談よ、ただ暇潰しに言ってみただけ」
「じゃあ、麻倉葉の腕をやる」
「腕?」
「足でも、目でも、心臓でも、何だって」
「葉」
「オイラから離れたって、それはオイラだろ?」
繋いだ手があたたかかった。
不安を覚えた夕暮れに、大丈夫だと君が笑う。
全部くれると言った君に、ばかじゃないのと可愛くない私の天の邪鬼。
[4回]
「ん?どした」
「なんとなく」
「うん?」
「えへー」
「へんな奴」
「あのね」
「うん」
「やっぱ、何でもない」
「ワケわかんねぇ」
「あのね」
「もう聞かねぇぞ」
「あかちゃん、できた」
がったん、と響いて蹲る君の背中。
テーブルで膝打ち付けたの?まぬけなんだから。
涙目で見上げてくる君が可愛く見えて、頭をちょっと撫でてみた。
[13回]