「ウィンリィー」
「んー」
「ウィンリィさーん」
「んんー」
「眠いなら部屋行けよー」
「やーだー」
「足が痺れるんですけどー」
「やーだー」
「じゃーこのまま一緒に寝るかー」
「ねるー」
直後に響いた鈍い音、後頭部にベッドボード。
なのに何で原因のお前が不思議そうな顔してるんだ!
腕の中のぬくもりに、うっかり意識を手放しそうになる頭を思いっ切り左右に振った。
[4回]
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「アルのファーストキス?オレ、でセカンド母さん」
「弟に手を出すなんてッッ!!」
「うわあぁぁああんっ!!兄さんに奪われた!!」
「はァ?家族のキスはノーカウントだろ!」
「それならあたしも父さんとしたことあるわ」
「じゃあ、ウィンリィと兄さんは家族以外ってある?」
「記憶にある限りじゃあ・・・」
「・・・ん?」
「・・・あれ?」
「「あれ?」」
声を揃えて首を傾げる。
そういえば、もしかして、もしかして。
幼い頃のおぼろげな記憶、手繰り寄せて鉢合った思い出。
[11回]
「自分の小指見つめて何やってんだよ」
「赤い糸が見えないかと」
「阿呆らし」
「見えたら分かりやすくて良いのに」
「その先がとんでもないろくでなしだったらどうすんだ」
「あぁ、そっか。それならエドのがマシだわ」
それなら、って何だ、それならって。
比べる対象が底辺過ぎて、意識されてるのかどうかすら分からない。
ここは照れて慌てるべきなのか、考えてる間に移った話題。
[6回]
「おはよー・・・」
「やっと起きて来た」
「誰の所為で徹夜したと思ってんのよう」
「特急料金ふんだくるくせに!」
「当然の報酬よ!それより珍しい」
「何が」
「まだ居たのね、いつもだったらすぐ出発するのに」
「あー、まぁ、うん」
「うん?」
「ウィンリィ、さっさと支度しな!」
「先に出掛けちゃうよー」
「あ」
「・・・偶然、だからな」
毎年、毎年、この時期に帰って来てたね。
偶然と言い張る君の合わせない視線、優しい嘘。
カレンダーの二重丸、父さんと母さんの居なくなった日。
[5回]
「味がしねぇ・・・」
「あっバカ!それJr.のよ!!」
「げ、ひとくち食った!」
「もー!!」
「俺の昼飯は?」
「エドのはそっち!!」
「リゾットなら間違えるに決まってるだろ!!」
子どもと似たような食事を口に運んで隣を見る。
子どもと同じように口を開けている君を思わず半目でじとりと睨む。
おいしそうに頬張るふたりに零れた溜息と、笑み。
[6回]
「やけに口数少ないわね?」
「んー」
「せっかく作ったレモネードいらないって言うし」
「コーヒー淹れてたからな」
「オレンジ貰ったの。食べる?」
「夕飯入らなくなるからいらね」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「エド?」
「うん?」
「・・・・・・・・もしかして口内炎?」
「・・・ち、がう」
「ハイ、嘘ー!あーんして、あーんっ!!」
「ぜってぇヤだ!!!」
いつかの仕返しする気だろ!
がっしと抑えられた顔を必死で逸らす。
やるのは良いが、やられるのは嫌だ!叫んだところで奪われた唇。
[8回]
「機械鎧技師になろうと思ったきっかけ?」
「なーんとなく」
「デン、かなぁ」
「デン?」
「デンの足を戻せる魔法なんて無い。でも機械鎧は動く手足になる」
「うん」
「それは、現実だわ」
「そうだな」
「現実なら、あたしにだって出来るじゃない」
叶わない夢のような夢を見るよりも、手の届く現実が欲しかった。
きっかけは愛犬、覚悟は幼馴染の兄弟に。
この豆だらけのちっとも女の子らしくない手が好きだと言ってくれたのは夢?現実?
[8回]
「レモンキャンディとオレンジキャンディ」
「ん?」
「どっちだと思う?」
「何が?」
「キスの味」
「――ッッはァ!?」
「どっちだと思う?」
「したことねぇのかよ」
「したことないわ」
「そっか」
「そうよ」
段々と無言になっていくあたし達。
いつもみたいに冗談めかして怒鳴るか笑うかして頂戴よ。
気恥ずかしくなって、螺子を締める音ばかりが響く。
[4回]
「アル、熱が出たって?」
「そう!そうなの!!」
「風邪引いたかな、最近気温差激しかったし」
「元に戻ったばっかで抵抗力落ちてるし、あっ氷枕取り変えなきゃ!」
「俺入れ替えてくるわ」
「あったかくして、摩り下ろしりんごと、はちみつみるくと、えっと」
「・・・何か俺のときより甲斐甲斐しく無ぇ?」
「えっ何?!何か言った!?」
「なぁんにもっっ!!」
やけくそ半分、大声で叫ぶ。
羨ましくなんて無いんだからな!
普通どおりを装ってたのに、症状軽そうな弟に含み笑いを零された。
[6回]