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鋼の錬金術師 58 (未来)

「あたし、エドが怖いわ」
「ちょっ、兄さん!ウィンリィに何したの?!」
「冤罪だ!!」
「だってずるいんだもの」
「はい?」
「あっちこっち旅してたから色んなこと知ってるし」
「そうだね」
「いつの間にか、身長だって追い越されてるし」
「はぁ」
「一緒に居ると、安心するし」
「信用されてたんだね、意外と」
「意外ってお前」
「頼りになるエドって、何だか怖いのよ」
「それ、怖いって言うより…」
「さっぱり意味が分かんねぇ!」
「兄さんは、ヒトの心の機微を学ぶべきだと思うよ」



不安じゃないの、怖いだけなの。
エドがエドじゃないみたいなのに、でもちょっとだけどきどきするの。
好奇心への恐怖?
知ってしまったら、もう抑えきれない。

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文学少女 1

「出来た?もうそろそろ?」
「三題噺が欲しいなら静かにして下さい」
「そんな眉間に寄せて書いたら、焦げたブラウニーみたいな三題噺になっちゃうんだから」
「焦げたブラウニー食べたことあるんですか。辛子入りましたー」
「やだやだぁ!どうしてそんなに可愛くないの、心葉くんったら!!」
「はいどうぞ、可愛くない後輩が書き上げた三題噺ですよ」
「いやね、冗談じゃない。心葉くんは夏目漱石全集の初版本くらいに素敵な後輩よっ」
「…食べ物と並べられても微妙に嬉しくないんですけど」



夢十夜は読みやすくてお勧めね。
嬉しそうに三題噺を頬張る彼女が涙目になるまで約3秒。
ブラウニーのナッツの代わりに入れられた鷹の爪を噛み潰したようだと泣き喚く。
いつも被っている迷惑行為を考えれば、これくらいは可愛い仕返し。

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鋼の錬金術師 57 

「あんたたちって、ほんとに急に帰ってくるわよね!」
「ごめんね、ウィンリィ」
「帰ってくる理由が機械鎧の故障って言うんじゃ無かったら大歓迎よ、アル」
「ざくざく何か刺さるんですけども」
「あらそう、厭味が分かるくらいにはなったのね」
「…兄さん、ここは素直に謝っておこう」
「まずはそのレンチを仕舞え、話はそれからだ」
「これで殴られるような覚えでもあるのかしら」


いっそひと思いにやってくれ!
じわじわと追い詰められる感覚に冷や汗が流れる。
蛇に睨まれた蛙ってのはこのことだ。

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鋼の錬金術師 56 (未来)

「ばっちゃん、こいつここに置いてって良い…?」
「ソファで寝てたら風邪ひくだろ。ベッドまで運んでやっておくれ」
「強くないんだから、酒なんて飲ませんなよ」
「少しの寝酒くらい良いじゃないか、じゃあ頼んだよ」
「へいへい、おやすみ」
「おやすみ」
「…こーの酔っ払い、起きろ」
「んン…」
「って言っても、起きるワケ無ぇか」
「………」
「……………襲っちまうぞ」
「…へ?」
「あ?」
「…え…えッ?!」
「なっ何でソコで起きるんだよ!!」
「だ、だってぇ!!」



ちょうど目が覚めちゃったんだもの!
真っ赤な顔した幼馴染の彼女の抗議。
いつも構わずくっついてくる癖に、たまにこちらが押せば慌てて下がる。
時々、本気で襲いたくなるのはオレだけの所為ですか。

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鋼の錬金術師 55 (未来)

「は?」
「だーかーらー」
「いや待て、それはいくらなんでもちょっと」
「新婚さんなんだもの、良いじゃないっ」
「天蓋付きベッドとかどこの王族だ」
「我が家のお姫様のお願いでしょー!」
「誰が姫だ、誰が」
「あたし」
「機械鎧にご執心なお姫様ってなぁ」
「あら、あたしエドにもご執心よ?」



とびっきりの笑顔で言ってみたのに、なによその微妙な顔。
別に機械鎧繋がりで言ったんじゃないわ、失礼ね。
あれもこれもと欲張りになっちゃう、近い未来の設計図。

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鋼の錬金術師 54 (未来)

「寒いわねぇ」
「そうだなぁ」
「ひとりよりふたりだと思わない?」
「はい?」
「寝るのが」
「…風呂入ってすぐ眠ればあったかいだろ」
「エドが子ども体温なのが悪いのよ!あったかいのよ!」
「理不尽だ!!」



鍵を閉めたくらいじゃ、家の鍵を管理している家主に対抗出来るはずもなく。
諦めてみたところで現状を受け入れられるほど紳士でもなく。
あのね、オレも一応男なの!
いい加減、無防備に安心するのは嫌がらせだと分かってほしい。

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鋼の錬金術師 53 (未来)

「駄目」
「そこを何とか」
「駄目ったら駄目」
「ウィンリィ~っ」
「だーめっっ!!」
「ばっちゃん、兄さん達なにやってんの?」
「今度出掛ける日時合わせだってさ」
「その前日まで、オレ確実に徹夜なんだよっ」
「あたしだってそこしか仕事の空いてる日ないんだもんっ」
「じゃあ、一週間延ばすとか!」
「観たい映画終わっちゃうの!」
「分かった!デザートプレートで手を打とう!」
「やだやだやだぁっっ!!」
「まぁ、仲は良いんだよね」
「一応、多分ね」



あの兄が随分妥協と譲歩を覚えたものだ。
最後は結局、言い負けて折れるんだろうけれど。
本気を出せばあんな仕事くらいさっさと片付けられるんだから、
可愛い彼女のわがままくらい聞いてあげる甲斐性持ちなよ。

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鋼の錬金術師 52 (未来)

「エド、膝枕してあげる!」
「…え、良い」
「遠慮しないで良いのよ?」
「いや、遠慮とかそういうんじゃなくて、ソレ」
「最近、耳掃除してないでしょ。ついでにやったげる」
「してるしてる、ちょうしてる」
「嘘、見てない」
「…だって、お前の怖ぇんだよ!!」
「この前のはちょっと失敗しただけよ!」
「そのちょっとの失敗で、鼓膜が破れるかと思ったわ!!」



ちょこおっと痛くしたくらいで泣きごとなんて!
拗ねて膝を抱えていたら、反対にやってやるって伸びてきた腕。
そうね、たまには良いかもしれない。
子猫が甘えるように、君の膝へと寝転んだ。

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鋼の錬金術師 51 (未来)

「あのね、夢を見たの」
「夢?」
「すっごく倖せな夢。嬉しくて、泣いてしまいそうな夢」
「どんな?」
「それが覚えていないのよ、でも倖せだったわ」
「へぇ」
「だからね、そのときにエドが隣に居てくれたらって思ったの」
「ウィンリィ?」
「あたしの夢の続きはエドが良い」
「…莫迦」
「莫迦じゃないもん」
「莫迦だよ。オレは、夢じゃなくて現実だ」



そっと頬を包む両手が優しくて、あたたかくて。
触れ合った額が痛いほどに熱を帯びる。
君が嘘じゃないのなら。
君が夢じゃないのなら。
あまく、あまく、チョコレートみたいにとろけそうなキスをあたしに頂戴?

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鋼の錬金術師 50 (未来)

「ウィンリィさん、お願いがあるんですけども」
「なによ、気持ち悪い」
「気持ち悪い言うな」
「エドが下手に出るときは下心アリのときだもん」
「下心て」
「やーらーしーいー」
「やらしくないっ!」
「で、結局何なのよ」
「それ」
「どれ?」
「オレの服を勝手に着るなっつー話だ」


あぁ、コレ?と大きめのニットの袖を引っ張る。
気付いたらセーターだの、カーディガンだの。
その癖こっちがショールだけでも借りたら怒る理不尽さ、冬場は特に要注意。

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