「ウィンリィ、洗濯洗剤どこにある?」
「上の戸棚に入ってなかった?」
「見てねぇや」
「洗濯?珍しい」
「さっき洗ったばっかりなんだろ」
「そうだけど、やったげるわよ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・何よ?」
「見返りが怖い」
「しっつれいね!」
抱えていた洗濯物をカゴごと奪い取られる。
今更下着くらいでうろたえはしないけれども、
自分でやるからと気を抜いてたことには変わりない。
こんなお転婆を嫁に貰う奴は大変だなと考えて、思いっきり頭を振った。
[3回]
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「ちょっとエド!窓閉め切ってんじゃないわよ!!」
「書類飛ぶんだよ」
「重石乗せれば良いでしょ!ほら開ける!!」
「どわぁ!?せめて10秒待って!!」
「もー!」
「もー、はこっちの台詞だっての!」
「換気しないと身体にも悪いんだから!」
「・・・心配してんの?」
「心配してんの!」
箒片手にぷんすかと怒る彼女に、面倒くさげに口を尖らす。
ありがとう、なんて素直に言える筈もなく。
思い切り開いた窓から飛び込んでくる風が、火照った頬に心地良かった。
[3回]
「アルは?」
「ばっちゃんの買い物ついてった」
「エドは?」
「・・・ここにいますけど」
「うん」
「ハイ?」
「おかえり」
「・・・ただいま」
寝起きでぼんやりしてるのか?
ぴたりと寄り添って隣に座る幼馴染に跳ねる肩。
ちっとも頭に入らない本の内容、数分が数時間に思えた午後。
[6回]
「あ、インク切れた」
「使う?」
「お前も使うんじゃねぇの?」
「別のを持ってるもの」
「じゃあ借りる」
「貸しひとつね!」
「ちょっ、キャンセル!!」
「キャンセル不可!!」
「ふたりとも何やってんの」
見れば分かるだろと叫ぶ兄と幼馴染。
どう見ても万年筆を押し付け合ってるだけにしか見えないんだけど。
呪いでもかかってるのかと首を捻った後に、絶望的な悲鳴を上げた兄が目に入った。
[3回]
「珍しい雑誌読んでんな」
「あたしだっておしゃれにくらい興味あるのよ!」
「へぇぇえええ」
「信じてない!!」
「いやいや、結びつかないだけ」
「ほんっと失礼しちゃう!!」
フリルとレースにアクセサリー。
見慣れない写真だらけの雑誌が落ち着かない。
幼馴染を異性と自覚したのはとうの昔、なのに視線を逸らした性別の違い。
[4回]
「・・・やっべぇ」
「兄さん、それウィンリィの」
「わ―――――!!!!」
「今の大声なに?!」
「わ―――――!!!?」
「あ―――――!!!?」
「あーあ、騒ぐから」
「あたしのマグが!!割れてる!!」
「直す!すぐ直すから!!」
「先に謝りなさいよぉっ!!」
「ごめんなさいでした!!」
直すと言いながら、結局はボクが直すんだよね。
兄さんの趣味がアレな所為か、妙な改良しちゃうんだもの。
直したマグに兄が大嫌いで幼馴染が大好きな、はちみつミルクを注いで仲直り。
[3回]
「エド、エド、猫の真似してみて!」
「にゃーん」
「可愛くない。きもい」
「やらせたくせに!!」
「アルがやると可愛いのよ?」
「お前、ヒトの弟になにやらせてんだ」
「デンが居るから猫は飼えないし」
「聞きなさいよ、ウィンリィさん」
オレも大概突拍子もない自覚はあるが、こいつの唐突さも負けてない。
猫みたいってこういうのを言うんじゃないのか?
悪ふざけにニャーと鳴いた幼馴染に妙な居心地の悪さを覚えた。
[6回]
「んー・・・」
「・・・え、なに」
「ん?」
「手」
「繋いでるのよ」
「見りゃ分かる」
「うん」
「おい」
「うん?」
「だから、なに」
「どうともないなぁと」
「は?」
「こっちの話」
恋をするとね、手を繋いだらどきどきするんだって。
でもね、こんなの昔から慣れっこなんだもの。
ふわふわするこの気持ち、どうやったら理由が分かる?
[4回]
「さすがに夜は涼しくなったわね」
「マジで生き返る・・・」
「ほんっと、アンタ暑さ駄目なんだから」
「冬は着込めばしのげるけど、夏は例え全裸でも暑いからな」
「・・・脱がないでよ?」
「オレは露出狂か!」
今の恰好でも十分涼しげじゃないの。
それ以上脱がれても困るわ。
恥ずかしさなんて覚える前に慣れてしまった、君との幼馴染としての距離。
[5回]
「兄さんはさぁ」
「何だよ」
「もうちょっと素直になるとか、優しさを見せるとか」
「ちょっと待て、アル。話が見えない」
「鈍感って、自分以外の対象に使うものだと思ってたんだけど」
「オレのことかよ」
「兄さん以外に誰が居るのさ」
呆れたように首を振る弟に、何を詰られているのかすら分からない。
ちょっと良い?とリビングに顔を出した幼馴染に、ほんの少し跳ねた鼓動。
触れられた機械鎧が熱を持った、気がした。
[3回]