「ウィンリィ、ちょっとこっち来い」
「なになに?」
「お前、アルにいらんこと言ったろ」
「言ってない」
「う・そ・つ・けっっ」
「嘘じゃないもんっっ」
「さっきアルから色々言われたんだぞ!」
「色々って何よう!」
「いっ、色々は、色々だ…ッ」
「言ってくれないと分かりませーんっ」
なんとなく想像は出来るけど。
君が聞いたそれって過分に脚色されてると思うわ、多分。
照れる君が可愛くて愛おしくて、もうちょっとだけ意地悪させて?
[4回]
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「兄さんって、ウィンリィが喜ぶようなこと言ってくれる?」
「例えばどんな?」
「可愛いとか、愛してるとか」
「あ、あい…っ?!」
「言わないの?」
「エドが言うわけないじゃない!!」
「あはは、やっぱり?」
「でっ、でも」
「うん」
「ときどき…嬉しいこと、言ってくれるのよ?」
可愛いとかじゃないんだけどね!
耳まで真っ赤にして弁解する幼馴染が可愛くて。
空気を読まずにリビングにふらりと顔を出した兄が、
意味ありげな笑みを浮かべた僕に嫌な予感を覚えた頃にはもう遅い。
[7回]
「寒いさむーいっっ」
「おかえり。買い物行ってたのか」
「うん、ただいま。雪降ってきたわよ」
「ばっちゃんがキッチンでホットミルク作ってたぞ」
「あ、貰って来ようかな。エドも要る?」
「要るかッッ!」
「ばっちゃん、あたし甘いのが良いー!」
ふわりと漂う甘い香り。
これがあの白濁色の飲み物でなければどんなに良いか。
カップに口をつける君があんまり倖せそうに微笑うから、
零れそうになった苦情を飲み下す。
[6回]
「おい。顔、赤いぞ」
「いつも通りよ」
「嘘言え、またお前寝てないだろ」
「何でそんなこと知ってんのよ、まさか覗き…?!」
「するか!!」
「これくらい大丈夫なんだから」
「大丈夫な奴は、そんなだるそうな顔してマセン」
「だるそうじゃないもん」
「…とりあえず、これを飲め」
「普通の水でしょ?」
「お前の飲んだその水、塩ごっそり入れたんだけど平気そうだな」
「う…嘘…っ」
「味も分からなくなってんじゃねぇか!ばっちゃーーーんっっ!!」
「やだ!駄目!注射やだぁっっ!!」
「やっぱりソレか!!」
注射が嫌だとか、お前は幾つだ!!
涙目でお願いされたって駄目なものはだ………っ駄目だ駄目だッッ!!
一目散に逃げようとした幼馴染の腕を掴んで肩に担ぐ。
[7回]
「エド、髪結ったげる」
「やりたいのか」
「やりたいのよ」
「おかしな頭にしないなら可」
「まかせとけー!」
「ちょう不安なんですけど」
「不安なんて無い無い。ささ、前向いて」
「鏡!手鏡希望!!」
「そんなの後にしてよぅ」
こっちの嫌な予感、ガン無視で嬉しそうに髪を梳く。
優しげな細い指が何度も耳の後ろを擽った。
その手が心地良くて、もう少し触れていて欲しいと願ってしまった。
[7回]
「…んっ」
「動くな」
「や、くすぐったい」
「やりにくいだろ」
「分かってるけど…痛っ、そこダメぇ…っ」
「ちょ、待て、上手く入らね…」
「んンっ、耳元で喋らないで…」
「…つぅか、さっきから妙な声出すな!!」
「だってエドがうまくやらないからでしょ!!」
「だったら両手塞がってるからピアス着けろとか言うな!」
「今、手がすんごい冷たいんだもん~っっ!!」
証拠だとばかりに、背中に入れられた手に飛びあがる。
心臓止まったらどうしてくれる!
気にせずピアスの定位置を確認すると、ありがと、ととろけるようにはにかむ彼女。
別の意味で止まりそうになった心臓が、思い出したように早鐘を刻む。
[8回]
「ね、ね、エド。ラベンダーとローズどっちが良い?」
「どっちも匂いがきっつい」
「シトラス系は?」
「それなら平気」
「じゃあ、こっち」
「ところで何のことだ?」
「今日のバスオイル」
「げ!?お前、何でいつも風呂に変なもん入れるんだよ!」
「変じゃないもん!リラックス出来るもん!!」
「ばっちゃんから苦情は?!」
「ばっちゃんの色気が増すって言っ…」
「うおおおおお聞きたくねぇ!!」
「あたしは好きなんだけどなぁ」
「俺は匂いで酔いそうになる」
「食べたくなっちゃう?」
「違うッッ!!」
ローズ時々ラベンダー、ミントの次はあまぁくとろけるストロベリー。
シロップ漬けのフルーツってこんな感じ?
足のつま先までお砂糖漬けのお菓子になっちゃう。
きっと今夜のキスはレモンキャンディみたいに甘酸っぱいわ。
[6回]
「エド、手」
「…悪いかよ」
「いつもはあんたが嫌がるじゃない」
「お前が必要以上にくっつくからだ」
「そんなにくっついてないですぅ」
「嘘を吐け、嘘を」
「じゃあ、どれくらいがくっついてるって言うのよ」
「これくらい」
不意に抱かれた肩が熱を帯びる。
あたしたち、真っ赤に熟れたリンゴみたい。
すぐに開いた距離が寒くて、寄り添うようにくっついた。
[8回]
「立ち聞き」
「…悪い」
「あたし、何も言ってないんだから」
「アルには言う癖に」
「だってアルだもの」
「オレのことなら、オレに言えよ」
「嫌よ」
「傷付く」
「知らない」
「意地っぱり」
「どっちが」
「あたしのこと好きな癖に」
「………っ」
「ほら、あんただって言わないじゃない」
どうしてこんなに、可愛くない台詞ばっかり出てくるの。
言いたいのはそんなことじゃないんだったら。
言えば良いんだろうと強い力で引き寄せられた。
真っ赤な顔で誤魔化すように抱き締めて、謝れないこの唇を塞ぐ君。
[14回]