「これ?」
「いや、もうちょっと大きかった気がする」
「こっち?それとも、えっと、これとか?」
「んー・・・?」
「もうっ!ハッキリしないわねっ!!」
「レースの柄なんて詳しく覚えてる方が怖ぇだろ!」
「じゃあ、どれ着たかくらい覚えててよ!!」
試着写真を広げて、ウエディングドレスの相談中。
珍しく似合うって言ってくれたくせに、曖昧にしか覚えてないなんて!
せめてデザインくらい!なんて思ったところで無駄かなぁ。
うつむいてみたら、ごめんのついでにわしわしと頭を撫でられた。
[13回]
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「腹減ったぁ」
「じっとしてるだけのくせに!」
「じっとしてたって、減るもんは仕方ないだろ」
「その割には身長に反映しないわね」
「誰がチビだッッ!!!」
「言ってないでしょー」
「言ったようなもんだろうがッ」
「まぁ、そうね」
「おぉまぁえぇええええ~ッッ」
「はい、終了。あたしもお腹空いちゃったぁ」
「おいこら!」
「兄さん、ウィンリィ、ばっちゃんがお昼にしようって」
「はぁい」
廊下に出たら、コンソメスープの良い香り。
次の怒鳴り声の前に聞こえたふたり分のお腹の音。
一時休戦、お腹がいっぱいになったら忘れる喧騒。
[13回]
「おいこら、ウィンリィ」
「ひゃあっ!!?」
「うおわ!!?」
「びっくりするじゃない!」
「俺もびっくりしたわ!!」
「急に声掛けるからっ」
「声掛けてうろたえるほど、やましいことでもあんのか」
「なっ、ない、わ、よ…ッ?」
「…お前、嘘吐くの下手だよな」
「あんたに言われたくないわよ!!」
慌てて隠した本が1冊。
見られてないよね、大丈夫だよねッ?
レパートリーを増やしたくて、君の好きな料理に張り付けた付箋。
[12回]
「サイズ、知ってるの?」
「は?」
「あたしのサイズ」
「えー…93くら…」
「どこのサイズよバカ!!」
「ってぇ!じゃあ、どのサイズだよ!?」
「指よ、指!」
「指ぃ?」
「指輪のサイズ!!」
遠回しで直球な要求に、息を飲んだ君の顔。
もしかしなくても考えてなかったわね!?
結婚指輪のちょっと前、エンゲージリングくらい夢見てみたい。
[19回]
「エド!手出して!手!!」
「手ぇ?」
「ほら、早く!」
「ん」
「右手もっ」
「…で、なんだこの状況」
「あったかい」
「へ?」
「手あったかいね、エド」
「…ばぁか」
「それ、さっき僕もやられたからね」
「うおわっっ!!!?」
邪魔するつもりは無かったんだけど、猛烈に邪魔したくなったんだ。
最近、他人の目気にせずにいちゃつくからたまったもんじゃない。
さっさと結婚しちゃえば良いのに、心で呟いたつもりが口に出ていたひとりごと。
[13回]
「兄さんさぁ…」
「…何だその物言いたげな間は」
「昨日…あぁ、やっぱ良いや」
「途中で止めんな!」
「怒らない?」
「な、内容による」
「じゃあ言わない」
「…怒らないから言ってみろアルフォンス!」
「兄さんに用事があって、部屋に行ったんだよね」
「は?いつ?来なかっただろ」
「寝る前」
「寝る前―――・・・あ゛ッッ!?」
「ごめん、見ちゃった」
真っ赤な顔で言い訳しようとする兄を遮って、耳を塞いで聞かぬフリ。
一応断ったんだからね、言っても良いかどうか。
兄の部屋の前で呼び掛ける幼馴染が、中へ入った後に消えた灯り。
[28回]
「わっ、とと」
「ばか、気ぃ付けろ!」
「ごめん、ごめん」
「お前、妊婦だって意識薄いだろ…」
「そんなこと無いわよぅ」
「ある、絶対ある」
「ぺったんこだったときとやっぱり違うのよ」
「あぁ、そんとき出てたのは腹じゃなくて乳だもんな」
「ううううううううるさぁいっっ!!」
ひとが気にしてることをっっ!!
好きで大きくなったんじゃないわよう!!
意地悪に笑う君の頭をぽかりと殴って背を向けたら、
不意打ちでぎゅうっと抱きしめられた。
[17回]
「やっとだね」
「やっとだ」
「笑ってくれるかな」
「嬉し泣きだろ」
「じゃあ、プラスα」
「何を?」
「ボクらがとびっきりの笑顔で『ただいま』を言うんだ」
「ははっ、了解!」
おかえりの分だけただいまを言うよ。
涙の分だけありがとうを返すよ。
両手を広げて抱きしめてくれたら、大好きだよって笑うんだ。
[33回]
「じゃーんけーん」
「ぽんっ!」
「オレの勝ち!」
「やだやだやだぁっ!!」
「さーてーとーっ」
「エド!ねぇ、エド!!一生のお願い!!」
「お前の一生は何回あるんだッ」
「だってぇッッ!!」
「何騒いでるんだい」
「エドがあたしのガトーショコラ取るんだもん!」
「じゃんけんで勝った方から選んで良いって言ったじゃん!」
「あたしが好きなの知ってて選ぶくせにッッ!!」
「オレだって好きな奴お前にいっつも食われる!」
「半分すりゃ良いだろうに」
「「あ」」
今頃気付いたの、馬鹿じゃない?
なんて言いつつ、お前も思いつかなかっただろ!!
半分しても、今度はどっちが大きいでくだらない大喧嘩。
[14回]
「なぁ、ちょっと、こっち」
「何よ、こそこそして」
「ばっちゃんに心配させるだろ」
「は?」
「お前、最近体調悪いとか?」
「へ?別に?」
「顔色悪いぞ」
「そんなこと言ったって、全然」
「この前吐いてたじゃねぇか」
「でも、吐いたらスッキリしたわよ」
「1回、ばっちゃんかどっかの病院で診てもらった方が」
「大丈夫だってば」
「ンなこと言ったって」
「強いて言うなら、子どもが出来たってことくらいだし」
「………………はァ!!!?」
分かったのは一昨日なんだもの。
驚かせようとは思ってたけど、心配させてたなんて気付かなかった。
にやけそうになる口元を抑えた後に、うんと喜んでくれた君の笑顔。
[22回]