「おいしそうに食べるわねー」
「不味そうに食べたっておいしくないだろ」
「気持ちの問題?」
「不味いものは不味いって言うけど」
「じゃあ、おいしいってこと?」
「今日はしつこいな、お前」
「あんたは素直じゃないわ」
伸びて来たフォークに刺したパンプキン・パイ。
美味しいと自画自賛の彼女と、素直においしいと言えない自分。
顔を出した弟がまたケンカしてるの、と肩を竦めて呆れる日常。
[8回]
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「焦げ臭い」
「…うっ」
「見事に焦げたパンケーキね」
「おっ機械鎧の動作確認兼ねてだなっ!」
「ちょっと、あたしの整備にケチ付ける気?」
「滅相も無い」
「どうすんの、それ」
「責任もって処理シマスヨ」
「ん」
「あ」
「…まっず」
責任もって食べられるくらいなら、もっとマシな味かと思ったのよ。
彼女は笑ってコンロに向かう。
君の唇に押し当てたフォーク、触れた機械鎧の手が、熱い。
[7回]
「わぁ、満身創痍」
「…他に言うことは無いのか、弟よ」
「またウィンリィ怒らせたんでしょ」
「その通りだよコンチクショウ!!!」
「痴話げんかに何言えってのさ」
「ち、わ…違うわッッ!!」
「じゃあ何?」
「だからだな、電話がどうのとか、話聞いてないとか」
「それを痴話げんかって言うんだよ」
あぁもう、ばかばかしいったら。
話を聞くだけ無駄だよね。
喚く兄に背を向けて、
結局甘い幼馴染のアップルパイの香りに頬が綻ぶ。
[12回]
「コロネロが、死んだ」
「リボーン」
「バイパーも自殺したそうだ」
「そう」
「やけに冷静じゃねぇか、ツナ」
「だって、つまりはそういうことだろ」
「つまり?」
「分かる限り、アルコバレーノについて調べたつもりだよ」
「へぇ」
「バイパー…マーモンがそんな真似するなんて思えない」
「コロネロは?」
「コロネロは…生き残るつもりだったろうね」
「そうだな」
「復活、出来るんだろ?」
「…それは、大空のアルコバレーノ次第だ」
未来を描く。
暗い、深い、闇に塗れた未来を描く。
拙い光を手繰り寄せ、大空に輝く太陽をもう一度掲げてみせるんだ。
[0回]
「ツナ、これボスから」
「ありがと、ランボ」
「…疲れてる?」
「そんなことないよ」
「肩揉んであげよっか?」
「オレ、年寄りじゃないんだけど」
「じゃあ、じゃあ」
「ランボ、こっちおいで」
「へ?」
「ここ、座って?」
「もうすぐツナの背に追いつくんだぞ」
「分かってるよ、大きくなったなぁ」
「ツナ、おじさんみたいだ」
「う、傷付く」
15歳にもなった少年を膝に抱く。
幼い頃は少女とふたり、一緒に両膝に乗っていたのにな。
成長した姿に入り混じる、嬉しさと寂しさ。
[0回]
「おいこら、鴆」
「おお、どうした、リクオ」
「どうした、じゃねぇよ」
「怒ってんのか?」
「呆れてんだ」
「俺に?」
「お前に」
「呆れられるようなことをした覚えは無ぇぜ」
「またぶっ倒れたって聞いたがな」
「空耳だろ」
「馬鹿言ってないで、とっとと休め」
「心配してくれんのか、嬉しいねぇ」
「血反吐吐いて喜ぶのはお前くらいだよ」
「喜んじゃいねぇっての」
春の雪を浮かせた杯、波々と香る薬酒を注ぐ。
ほのかに揺らぐ朧月、生絹の如く庭先へと降り積もる。
薄紅の花びら愛でて、言の葉なしに更ける夜に微笑う。
[5回]
「望み薄」
「そう言わないで下さいよ」
「大体、君って謀って苦手分野でしょ」
「苦手分野は克服するためにあるんです」
「言うじゃない」
「そんなワケで協力お願いします」
「ワオ、僕まで巻き込む気?」
「楽しいことになりますよ、雲雀さんにとっては」
「だろうね」
獲物を狩る目、ボンゴレにとって彼は諸刃の剣。
利害さえ一致すれば、気まぐれで手を貸してくれることもあるけれど。
敵と味方を裡に抱えて、
それでも信じる俺を愚かだと嗤う貴方だからこそ。
[1回]
「欲しいものなんて、無いんです」
「本当に?」
「オレが欲しいもの、かな」
「いつも他人のことばかりだよね、君は」
「まさか」
「皆が居ればそれで良い?」
「はい」
「エゴだね」
「知ってますよ」
平然と言ってのける君の、誰よりも残酷な優しさ。
例えば、魔女の渡した毒林檎を毒と知っていて口にするような。
愛していると囁きながら、手の届かない場所へと逃げていく。
[0回]
「んむ」
「これ食って大人しくしてろ」
「食べ物でつられたりしないんだから」
「じゃあ要らねぇんだな?」
「要る要る要りますー!!」
「あと1日待ってくれたら、いっくらでも構ってやるから」
「嘘だぁ、仕事終わって1日は爆睡するくせに!」
「余力残しときますぅ」
「…エドが言うと、なんかえろい」
「うっさいわ!」
ちょっとだけ構って欲しくて、仕事部屋を覗き込む。
仕事の邪魔してる自覚くらいあるわよ、ちゃんと。
振り向かない背中に舌を出したら、タイミング良くこちらを見る君。
[19回]