「おいこら、鴆」
「おお、どうした、リクオ」
「どうした、じゃねぇよ」
「怒ってんのか?」
「呆れてんだ」
「俺に?」
「お前に」
「呆れられるようなことをした覚えは無ぇぜ」
「またぶっ倒れたって聞いたがな」
「空耳だろ」
「馬鹿言ってないで、とっとと休め」
「心配してくれんのか、嬉しいねぇ」
「血反吐吐いて喜ぶのはお前くらいだよ」
「喜んじゃいねぇっての」
春の雪を浮かせた杯、波々と香る薬酒を注ぐ。
ほのかに揺らぐ朧月、生絹の如く庭先へと降り積もる。
薄紅の花びら愛でて、言の葉なしに更ける夜に微笑う。
[5回]
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