「のう、十六夜」
「如何なさいました」
「月の満ち欠けを何に例う」
「月の、満ち欠け」
「如何様に」
「貴方様のように、私は思います」
「私?」
「えぇ、添う」
「何故」
「ヒトの手の届かぬ美しきものは全て貴方様に例いましょう」
「ヒトの手の届かぬ美しきもの」
「虚を、裏を、感じさせぬ程の力強さ」
「私が?」
「他に御座いまして?」
煌々と浮かぶ宵闇の月。
空を見上げる度に姿を変え、時には隠れる天照大御神の弟君。
其処に居るのに目に映すことも出来ぬもどかしさ。
愛しきヒトへと姿を重ねる。
[4回]
PR