「ウィンリィさーん」
「うん?」
「重いんですけど…でぇ!!」
「重くないもん!エドのばか!!」
「退け!重い!本が読めねぇ!!」
「また言った!!アルに言いつけてやるっっ!!」
「だ―――――!!!分かった!分かったからここに居ろ!!」
何でわざわざオレの膝に座るんだ。
上機嫌な彼女が鼻歌交じりにくっ付いて、
転がしていた毛糸を手繰る。
邪魔したら怒るんだろうな、どうせまた。
背中に流れた髪のひと房に、気付かれないよう口付けた。
[8回]
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「もう行くの?」
「見送りしてくれるんですか?」
「まさか」
「ですよね」
「…へぇ、死炎印」
「まぁ、これくらいは」
「随分皮肉った書置き。まるで遺書だね」
否定も肯定もせずに、青年は微笑う。
『Arrivederci』、綴ったインクはとうに乾いた。
ごめんなさい、ほんとうの想いを奥底にしまう。
[0回]
「望むなら、覚悟を決めなよ」
「俺は、そんな覚悟なら要りません」
「君が要らなくても、彼らが要るんだ」
「だけど、雲雀さん」
「それとも、昔の彼らを過信するつもり?」
「…いいえ、俺を含めて彼らにミルフィオーレに対抗する力はありません」
「分かっているじゃないか、何を迷うのさ」
「俺の」
「君の?」
「至らなさと、仲間への罪悪感」
「馬鹿馬鹿しい」
「もうひとつ」
「言わなくて良いよ、聞くに耐えない」
「貴方を巻き込んでしまうしかなかった、俺の力不足を情けなく思う」
本当は、誰ひとり巻き込むつもりなどなかったのだと。
本当は、ひとりで抱え込むつもりだったのだと。
最期の最期に恨まれ、憎まれ、見放されたとしても尚。
その優しさは非道く、非道く、残酷な色を湛える。
[0回]
「最近、何こそこそしてるの」
「珍しいですね、こっち側に来られるなんて」
「僕の話、聞いてる?」
「雲雀さん、お願いがあるんですけど」
「嫌だね、君達と群れるだなんて」
「いいえ」
「沢田綱吉?」
「俺に、協力して貰えませんか」
「―――…言ってみなよ」
回り始めた歯車が、歪な音を立てながら。
ぐるぐるぐると、がらがらがらと。
さぁ仕掛けよう、我が人生最大のUna trappola ed un truccoを。
[0回]
「消えないよね」
「悟空」
「皆、居なくならないよね」
「…お前がそう、望むのなら」
「絶対、約束だよ」
「あぁ、だから」
名前を呼ぼうとして、全ての景色が闇に染まる。
忘れて良い、と彼が笑った。
理由さえ分からないまま、幼子は声が枯れるまで―――泣いた。
[2回]
「沢田綱吉」
「雲雀さん、草壁さんが探してましたよ」
「僕と遊ぼうよ」
「群れるの嫌いじゃなかったんですか?」
「戦闘は相手が何人だろうが敵と言うひとつのカテゴリで、僕は常にひとりだからね」
「なるほど。じゃあ、お断りします」
「どうしてさ」
「その一、仕事が山積み。その二、サボったらリボーンの制裁。その三」
「怪我するのが嫌だから」
「その通りです」
あぁ、その含み笑い。
激しく嫌な予感ばっかりです。
数秒後、窓から全力疾走で逃げる自分が浮かんだ。
[0回]
「死なないでね」
「テメェ、誰に向かってモノ言ってんだ」
「そりゃ勿論、ハイパーにスパルタな家庭教師サマに」
「10年で随分口が達者になったな」
「こうでもならなきゃ、やってられないよ」
「甘ちゃんなとこは変わってねぇだろ、ダメツナ」
「そこを変えないのがオレのモットーなの」
「早死にするぜ」
冗談を冗談でないと分かっていながら交わし合ったあの日。
死と隣り合わせの、もう戻れない道を歩いてく。
長く伸びた影の先が深い闇へと消えていった。
[0回]
「わ、手大きいね」
「普通だろ」
「『どうしてエドの手はそんなに大きいの?』」
「聞いたことあるな、そのフレーズ」
「どうして、狼さん?」
「だーれーがー狼だッ」
「きゃーっっ」
ころころと笑う君を照れ隠しに抱き締めた。
君を包み込む為、だなんて口が裂けても言えるはずない。
[11回]
「俺ってそんなにレイコさんに似てるのか?」
「まぁ、似ているな」
「まぁって何だよ、まぁって」
「意識の問題だろう、お前という人間を知っている私は今になってみれば似ているとは思わん」
「何だ、それ」
「例えば私の魂が、そうだな、ヒノエと入れ替わったとしたらそれは私か?」
「違うな」
「そういうことだ。外見なんぞひとつの見解に過ぎん」
おかしなことを気にするものだと、彼はごろりと横になる。
けれどね、自分と繋がりがあるものを実感出来るのは、
どこかほっとするんだよ。
いつも彼がヒトは面倒だと言う意味が、
ほんの少し分かった気がした。
[2回]