「あ!良いもの飲んでる!!」
「げ、煩いのに見つかった」
「煩いって何よぅ!」
「言ってるそばから分捕るな!」
「喉渇いてたんだー」
「あぁ、ソウデスカ」
「やっぱりヒトがいれてくれたレモネードはおいしいわぁ」
「ばっちゃん強盗被害ー!!」
「うるさいねぇ」
「同じもの飲むのは気にしないんだ」
ふたりとも、それ何て言うか知ってる?
聞いたところで昔から。
ノーカウントな間接キス。
[5回]
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「正直、どう思ってます?」
「無謀だね」
「あ、やっぱり」
「僕はともかく、たかだか中学生に何が出来るって言うの」
「雲雀さんだって子どもだったでしょー」
「もう忘れたよ」
「都合良いなぁ。じゃ、後は宜しくお願いしますね」
「どっちが都合良いんだかね」
それは勿論そっちでしょ、彼は肩を竦めて席を立つ。
もう戻らない部屋を振り返りもせず、空の指を握りしめた。
さよならを告げた唇は、似つかわしくない微笑みを浮かべる。
[0回]
「ほら見て見て~っ」
「わぁ、ウィンリィどうしたの?」
「何だ、その格好」
「ばっちゃんが仕立ててくれたの」
「似合ってるよ、その橙色のワンピース」
「ほんと?ありがと」
「どーせオイルで汚すんだから、さっさと着替えとけよ」
「もー!アンタはそういうことしか言わないんだから!!」
「あーあ。行っちゃったよ、ウィンリィ」
「…殴られたオレには一言もナシか」
「素直に可愛いって言えば良いのに」
「誰が言うか!!」
言えたら苦労しねぇっつの!
別に思ってもねぇけど!!
目の端に映った、ひらりと揺れるオレンジ。
[3回]
「何それ」
「あれ、雲雀さん」
「訊いてるんだけど」
「正一くんに預けようと思って」
「珍しい匣」
「ボンゴレ匣って言うんですよ」
「安直」
「言われると思ったから言わなかったのに」
「で?」
「過去のオレ達に託すんです」
「じゃあ、僕のはとびきり使える奴にしてよ」
「えぇえ?」
「喧嘩売ってる?」
「あの頃の雲雀さんにそんなの渡したら、とんでもないことになると思うんですケド」
「良いじゃない、面白いくらいに暴れてあげる」
「ものすごぉく考えておきます」
冗談みたいに笑い合う。
もうすぐ取り返しのつかない大きな嘘を吐くところ。
未来と世界を彼らに託そう。
ここから手放す、確かな繋がり。
[0回]
「で?」
「はい」
「壊した?」
「その通りで」
「何度目?」
「か…数えきれない、ほど…」
「分かった上で、更に」
「い、いえす」
「…もーーーーーー堪忍袋の緒が切れたぁぁぁあああ!!!!」
「落ち着いてウィンリィ!!」
「そうだ!落ち着け!!な?!」
「誰が!誰の所為で!!落ち着けないと思ってんのよ!!!」
「オレの所為です!!!」
「分かってるならそこに直れーーーーー!!!!」
「ぎゃーーーーーーーー!!!!」
「…あぁ、そうか。これって一種のストレス解消かもしれない」
動かなくなった兄と怒り冷めやらぬ幼馴染。
毎度ながらの光景に、呆れるやら和むやら。
とにかくここは、
ほとぼりが冷めるまで愛犬と共に散歩にでも行った方が吉だろう。
[4回]
「あの、妖様」
「うん?」
「私はヒトの身です」
「まぁ、添うじゃな」
「夫婦に成ることで、貴方様の足枷に成りはしませんか」
「枷?」
「はい」
「可笑しなことを言う」
「私は」
「そなたが儂の何を妨げると?」
「なに、を」
「儂はぬらりひょん。枷に成るものなぞひとつも持っては居らんよ」
深紅の盃に白磁の月を浮かべた酒を喰らう。
陰の穢れも全てを力に。
彼のモノが纏う衣、其は畏。
妖しきまでに鬼かと見間違う、魔魅を宿した瞳に溺れる。
[6回]
「十六夜」
「もう少しだけ」
「成らぬ」
「まぁ、意地悪」
「構わぬ。早う休め」
「若しかしたら、貴方と過ごす時すらあと僅かやも知れぬのに」
「十六夜」
「空言では、無いでしょう?」
「空言だ」
「意地悪、ね」
あと僅かやも知れぬ。
口から出たのは真の言の葉。
幾許かの暇に泣き縋るより、微笑って貴方の傍に居たい。
十六夜の月は今宵も闇を照らしてくれるだろうか。
[4回]
「始まるね」
「そうだな」
「行くの?」
「決まってんだろ」
「そっか」
「また泣いて『行かないで』とか言う気か、ダメツナ」
「泣いてないだろ」
「ま、その辺りはそろそろ評価してやっても良いな」
「あぁ、そうですかっ」
いつも通りの軽口。
いつも通りの喧噪。
もうすぐ来るのは終焉の序曲。
分かっていながら、オレにはあいつを止めることなんて出来なかった。
[0回]
「お前は知っていたんだな、ルーチェ」
「えぇ」
「未来を変えようとは、思わなかったのか」
「思わなかったわ」
「強いな」
「いいえ、違う」
「?」
「残酷と言うのよ」
背負わせてしまった罪を。
継がせてしまった呪いを。
この命はもうすぐ終わる。
続く宿命を魂に刻み、消えやらぬ血脈は流れゆく。
どうか、どうぞ、一縷でも構わない。
その命の先に見えるのが満ち足りた希望でありますよう。
[0回]