「ほらよ」
「え?」
「あ?」
「え?」
「ん?」
「ええええええ!!!?」
「うお!?」
「エドが花束なんて!花束なんて!!」
「この前ほしいって騒いでたのお前だろうが!」
「言ったけど、ほんとにくれるなんて思わなかったんだもん」
「おまっ、要らんなら返せ!」
「やぁよう」
色とりどりのガーベラにマーガレット。
春めかしいブーケに口付ける。
喜んでる、ん、だよな、一応。
鼻歌交じりに零れる彼女の笑顔に、こちらまで頬が緩みそうになるのを必死に堪えた。
[9回]
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「あれ」
「アル、おかえり」
「ただいま」
「ばっちゃん、アル帰って来たぞ」
「あぁ、おかえり」
「ただいま、ばっちゃん」
「そんなとこ突っ立ってないで、座ったら?」
「ウィンリィ、これあげる」
「絆創膏?あたし、怪我なんてしてないわよ」
「怪我にも貼るけどね」
「『にも』?」
「うん」
「………?」
「………」
「………………ッッ!!!!」
「兄さん」
「分かった、アルフォンス。分かったからそれ以上言うな…ッッ!!」
せめて見えないとこに付けてあげなよ。
ため息吐くついでに零す弟の顔を振り向けるはずもなく。
洗面所へと走って行った彼女から、銀色の凶器が飛んでくるのも時間の問題。
[11回]
「エド、口開けて」
「あー?」
「あげる」
「チョコ?」
「おいしい?」
「うまいけど…なにごと?」
「理由が無いとチョコもあげちゃ駄目なの?」
「駄目じゃないけど、下心が怖い」
「失礼ねっ!」
せっかくおいしいとこのチョコ買ってきてあげたのに!
ぷんすかとむくれている彼女に、謝るタイミングを逃す。
ごめんの代わりにチョコレート味のたくさんのキス。
[6回]
「えっとねぇ」
「………うん」
「プリンと、シフォンケーキと、ドーナツ、ガレット!」
「肥える!絶対肥える!!」
「肥えるって言わないでよ!家畜じゃないんだから!!」
「確実だろ!ぜってぇ太る!!」
「だって、やっと解禁なんだもの」
「目標体重になったからって、逆戻りだと思いマス」
「リバウンドは気をつけるもん!」
「だからって食い過ぎ。一気に行くことないだろ」
「じゃあ…プリンとシフォンで我慢する」
「それでもふたつ…」
でもやっぱりマシュマロココアも。
目を輝かせてカフェのメニューに指を走らせる。
適度に食えば、太りもしないと思うんだけども。
そもそもどこが太っていたんだか、いまいち分からない彼女にため息ひとつ、苦笑がひとつ。
[6回]
「くしゅんっ」
「ウィンリィ、風邪かい?」
「違うと思うけど、どうだろ」
「風邪?」
「わっ、びっくりした!」
「お前、今薬飲めないだろ」
「だから、多分違うって」
「用心するに越したことねぇじゃん」
「ないけどぉ」
「あったかくしてもう寝ろ。風呂入ったよな?」
「エドが一緒に寝てくれたらあったかいんだけどなぁ」
「腹潰したらどうすんだよ」
「まだぺったんこよう」
ショールをぐるぐる巻きにされて、2階へと押しやられる。
背中から離れた両手が寂しくて、離れる前に抱き付いた。
驚いた君の唇にキスをして、早く来てねと擦り寄せた頬。
[11回]
「お客さんから葡萄貰ったんだけど食べる?」
「食べる」
「粒が大きくってねぇ、香りが良いの」
「うん、美味い」
「あたしもひとつちょうだい」
「ほい、勝手に取っ…」
「ん」
「…咥えてんの取ることないだろ」
「ヒトの食べてるのっておいしそうに見えるじゃない」
むぐむぐと口を動かしながら悪びれない。
取られたものは仕方がない。
今度は取られる前に放り込み、キスするついでに半分こ。
[6回]
「あひる隊長発射!」
「ぶっ!!」
「命中!」
「ウィーンーリーィーッッ」
「きゃーっ」
「なんだよ、このあひるのおもちゃ」
「前にね、ロゼさんとこに泊まったときにお風呂にあったなぁって思い出して」
「買ってきたのか」
「うん」
「ガキも居ねぇのに」
「これから出来る予定ですぅ」
水飛沫と一緒にころころ弾ける笑い声。
バスタブの縁に齧りついて、平常心を装う状況。
今、手を伸ばしたら、どれくらい驚くだろうか。
[9回]
「…マジで一緒に風呂入る気?」
「嬉しいくせに」
「勘弁して」
「エド、最近湯船浸かってないでしょ」
「シャワーは浴びてマス」
「疲れがとれないんだから」
「睡眠で補ってるんだよ」
「そんなんだから、あたしが一緒に入ってあげるって言ってんの!」
「…襲うぞ」
「望むところよ」
違う、そこは望むとこじゃない。
最後の抵抗で発した言葉も、難なく受け止められてこちらが撃沈。
ここはもう開き直って、ほんとに襲ってやろうかと呟いていたら笑われた。
[7回]
「風呂入ってくる」
「はいよ」
「…おい」
「ん?」
「お前、なんで着替え持ってんの?」
「お風呂」
「オレ、入るって言ったよな?」
「言った」
「ハイ?」
「一緒に入る!」
「…………………ッ、駄目!」
「お風呂くらいけちけちしなくても良いじゃない!」
「ばっちゃん、とめろよ!!」
「犬も食わないもんに口出しするほど野暮じゃないよ」
仕事がひと段落したから、爪の先までぴかぴかに磨くの。
一応女なワケだし、それはまぁ良い、構わない。
言わせてもらうならば、そうだな、ひとつ。
そういうのは、ひとりのときにやってくれ!
[6回]