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鋼の錬金術師 98 (未来)

「あ゛ー」
「エド、声が変」
「風邪引いたかな」
「喉痛い?」
「扁桃腺腫れてるっぽい。あと咳が」
「うがい薬は、っと」
「塩水で良いよ。それと、暫く仕事部屋で寝る」
「何で?」
「お前も仕事詰まってるだろ。感染ったらどうする」
「そう、だけど」
「不服そうだな」
「だって…ひとりで寝ると、エドが寒いでしょ?」



ソレ絶対、寒いのオレじゃないだろ、お前だろ。
まだ何か言いたげに腕にしがみつく彼女の頭をぐりぐりと撫でてみる。
そしたらきょとんと首を傾げて、何故か同じように撫でられた。

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鋼の錬金術師 97 (未来)

「ん?」
「むー」
「寒いのか?」
「ちょっと、あたしがくっつくときは寒いときなの?」
「大抵において」
「ひっどぉい!」
「じゃあ何だよ」
「最近、一緒に並んで座ってないなぁって」



語尾が小さくなっていく彼女。
ちょっと待て、卑怯過ぎる、不意打ちだ。
肩に手を置く前に、擦り寄るように背中に回された腕。

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鋼の錬金術師 96 (未来)

「あっれぇ?」
「ん?」
「あたしの定規知らない?」
「おいおい、設計するときの商売道具だろ」
「あ!!」
「突然、大声出すなっ」
「クロゼットの立てつけ悪くなってたから支えに使ったんだった」
「商売道具だよな!?」



そういや、オレの分厚い本、貸したっきり返ってきてない。
まさかと思うけど、まさかだよな?
使用方法に一抹の不安を覚えつつ、彼女の部屋に押し入った。

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鋼の錬金術師 95 (未来)

「出来た!」
「おい、縫い目歪んでんぞ」
「ミシンって速いのよ」
「あぁ、そう…?」
「せっかく繕ってあげたのに!」
「そりゃ、ウィンリィさんが思いっきり裂いてくれたからな」
「ドアノブに袖が引っ掛かるなんて思わなかったんだもの」
「へいへい」
「文句言うなら縫い直すわよー」
「文句はあるけど、嫌だとは言ってないだろ」



目を瞬かせた後に嬉しそうに笑うな。
恥ずかしい台詞言ったワケでもなのに、こっちが照れる。
不揃いな縫い目と、元通りのロングコート。

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鋼の錬金術師 94 (未来)

「膨らんできた?」
「まだ目立たないと思うけどな」
「ワンピースのが楽だけど、体型戻るかなぁ~」
「産んだ後に考えろ、そういうことは」
「ダイエットするときはエドも付き合ってね」
「オレまで巻き込むな!」
「あたしにちょっとくらい遠慮してよう!」



目の前で、平気でお菓子とかたくさん食べるんだから!
こっちは食事制限してるのにデリカシーが無いわっ。
憎まれ口叩きながらも、君の嬉しそうな穏やかさがくすぐったくて愛おしい。

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鋼の錬金術師 93 (未来)

「いち抜けた!」
「う、嘘だろ…」
「現実を見なさい、現実を」
「嘘だ!あり得無ぇ!!」
「エド、ババ抜き弱いのよ」
「兄さん、顔に出るからね」
「完璧なポーカーフェイスなのに!!」
「エド、鏡見ておいで」
「ばっちゃんまで!」
「兄さん、兄さん、ちょっと耳貸して」
「んあ?」
「…………」
「…………ッッッ」
「あ、真っ赤になった」
「嘘を吐けないねぇ」



ほんとに分かりやすいんだよね、面白いくらい。
あぁ、何を耳打ちしたかはご想像にお任せするよ。
からかい甲斐のある兄の迂闊さ、
もうちょっと気をつけた方が良いんじゃないかな。

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鋼の錬金術師 92 (未来)

「あたしとしてはエドにリードしてもらいたいワケなのよ」
「…ソウですか」
「いつもあたしがお願いしてばっかりなんだもの」
「そっ、そん…」
「酔ったときくらいしか積極的になってくれないし」
「…は?」
「え?」
「酔ったとき、が、なに…?」
「…覚えてないの?」
「なに、を…?」
「……………」
「……………」
「……内緒」
「ちょっ、オレ何したんだよ!?おい!!」
「しーらなーいっ」



忘れちゃったこと、せいぜい後悔すれば良いんだわ。
あーんなことやこーんなことしてるんだから!
青くなったり赤くなったり、困ってる君の隣で舌を出す。

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鋼の錬金術師 91 (未来)

「もしもし、ウィンリィさん?」
「はいはい、エドワードさん?」
「何でオレの部屋でお茶してんの」
「あんたがお茶の時間に降りてこないからでしょ」
「んなこと言ったって、仕事してたし」
「適度に休憩取った方が効率上がるんだから」
「休憩ねぇ」
「何よう」
「ウィンリィ」
「ん?」
「ベッドに座るな、別の休憩取るぞ」



スパナで殴られるかと思ったけれど、真っ赤な顔して馬鹿と言われた。
悪かったな、こっちは仕事続きで欲求不満なんだよ。
近付いて、ぎゅっと目を瞑った彼女に触れるフリしてカップを受け取る。

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鋼の錬金術師 90 (未来)

「おなかすいた」
「…はぁ」
「おーなーかーすーいーたー!」
「食えば良いだろ!」
「エド、何か作って」
「オレかよ」
「この前のボロネーゼおいしかった!」
「材料無ぇっつの」
「アルだったら作ってくれるのにな…」
「…アルを引き合いに出したって作らないからな」
「けちー!」



仕方なしにキッチンのリンゴに齧り付く。
全部食べ終わった頃に、キャラメルみたいな甘い香り。
卵とミルクと砂糖を並べて、君と半分フレンチトースト。

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鋼の錬金術師 89 (未来)

「エドの手、好きよ」
「手?」
「前に、あたしの手は生かす手だって言ったでしょ」
「あぁ」
「だったらエドの手は生み出す手ね」
「錬金術の話か?」
「それも、だけど」
「他に何かあったっけ」
「エドが触れてくれると嬉しいの」
「は、イ?」
「嬉しいって気持ちが生まれる手、だわ」



恥ずかしいこと言うなって顔して睨まないでよ。
睨んでる割には目元が赤くて、ちっとも怖くないんだから。
ぬくもりが生まれる手、優しく触れる手。
君の不器用な手のひらに愛おしさが込み上げる。

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