「…えど、ブランケット全部取らないで」
「ん、あー…わり…」
「寝てた?」
「多分」
「あたしも」
「ついでに起こすな」
「もちょっと広いの買おうよ」
「そだなー」
「さむい」
「なら、こっち来い」
「また食べられちゃう」
「食わねぇよ」
「ほんと?」
「…多分」
言いながら、どこ触ってるのよっ。
確かに絶対とは言わなかったけど。
君の触れた場所からやけどしちゃうみたい。
ふたり分のぬくもり、ふたり分よりちょっと小さなブランケット。
[12回]
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「エド、ごめんなさい」
「…謝られるようなこと、オレされたっけ?」
「あのね」
「うん」
「えっと」
「何だよ」
「駄目、やっぱり言えない!!」
「は!?何!?オレ、何されたの!!?」
この前の理由の分からない上機嫌とか。
今回の理由の分からない謝罪とか。
ほんっとにこいつの頭の中、見てみてぇ!!
一生振り回される気がするのは、予感じゃなくて絶対事項。
[8回]
「兄さん、ウィンリィ機嫌良いね」
「何故オレに言う」
「兄さんが何かしたのかと思って」
「いや…?」
「心当たり無いの?」
「無い、はず」
「ウィンリィ、良いことあった?」
「えへー、分かる?」
「うん」
「あのね、エドがね」
「オレ?!」
「やっぱり何でもなーいっ」
「…兄さん?」
「いやいやいや!?」
ほんとに覚え無いぞ!?
オレ何かしましたっけ!?
嬉しそうに歌を口ずさむ彼女が突拍子もないことを言い出しそうで、
気が気でない一日の始まり。
[11回]
「エド、一緒にお風呂入ろ!」
「嫌だ、って何回言ったら分かるんだ、お前は!」
「だって、本気で嫌がって無いし」
「んなッッ!!?」
「あんたって嘘吐けないわよねぇ」
「これは嘘とかそんなんじゃなくてだなぁ!!」
「良いもん、アルと入るから」
「ちょっと待ったぁぁあああああ!!!」
入るワケ無いだろ、本気で止めるなよ。
たまに里帰りしても、変わらない兄と幼馴染の痴話喧嘩。
このふたりがくっ付いて、安心して見ていられるようになるまであとどれくらい?
[9回]
「ウィンリィ、寝ぐせ」
「えっ、どこ?!」
「前髪の、ほら」
「さっき、このままでお客さんの前に出ちゃった~ッ」
「誰も気にしないだろ」
「あたしがするの!」
「妙なとこで女らしいよな、お前」
「妙なとこって何よう!」
何、ってそのまま言葉の通りだろ。
ほんとに女か、と何度言ったか分からない。
困ったように眉尻を下げて、必死で鏡とにらめっこ。
可愛いと言ったら怒るだろうか。
[8回]
「エドはさぁ、子ども何人くらい欲しい?」
「ふたり以上は…って何言わせてんだッッ!!」
「訊いただけじゃない」
「遠回しに誘ってると見なすぞ」
「やれるもんならやってみなさいよ」
どうせ躊躇うに決まってるんだから。
息を飲み、警戒するように一歩分だけ距離を開ける。
やっぱり出来ないんじゃない、言いかけたあたしの唇に触れた君。
[11回]
「あーあ」
「何だよ、アル」
「身体、ちっちゃくなっちゃったなぁ」
「ソレはオレへの厭味か」
「でも」
「うん?」
「兄さんが、近い」
「…そうだな」
「ウィンリィも、ばっちゃんも、デンも、皆」
「あぁ」
「ヒトって、あったかいね」
「今更じゃねぇか」
「うん、今更だ」
握った手のひら、瞬いた目、肺の奥まで酸素を送る。
ひとつひとつ、感覚を思い出しながらゆっくりと伸ばした腕。
泣きそうな幼馴染の顔と、くしゃりと歪められた兄の顔。
倖せの意味を、改めて思い知る。
[7回]
「あ、虹!」
「おお、珍しいな」
「虹のふもとには宝物があるとか」
「非現実~」
「エドは夢が無いのよ」
「オレのは別に、虹のふもとまで行かなくても良いし」
「へ?」
「なん、だ、よ」
「じっ、自分で言っておいて照れないでよね!」
何だってのよ、まったく!
たまに嬉しいこと言ってくれたと思ったらへたれるし!
恰好良さなんて今更求めてないけれど、
繋いだ手くらい握り返してくれても良いんじゃない?
[7回]