「エド、エド、これどう?」
「えー」
「何よ、その反応」
「上に何か着るのか、ソレ」
「このままだけど?」
「薄着過ぎねぇ?」
「いつもこんなものじゃない?」
「前から思ってたけど、お前露出面積広い」
「だって、エドしか居ないし」
「は?」
「寝るとき用」
あの、寝る、ってそのままの意味デスカ。
薄手の生地のチュニックが、ふわりと揺れて翻った。
飛び付いた君を抱き止めて、甘いあまい誘惑に溺れる。
[11回]
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「あーあっ」
「何?」
「別にぃ」
「別にってことは無いだろ」
「エドはもしかして、もしかすると、もしかするのかもかもしれないなぁって」
「はい?」
「べーつーにーぃ」
「分かんねぇ奴」
「分かんなくて結構ですぅ」
「そうだ」
「何よう」
「誕生日欲しいものあるか?」
あぁ何だ、やっぱりソレか。
どうせオレが忘れてるとでも思ってたんだろ。
生まれたときからの付き合いなんだ、忘れる方が難しい。
[11回]
「エド、ここにリンゴがあります」
「まあ、あるな」
「ひとり一個ずつ食べるとしたら、いくつ要るでしょう」
「オレとお前とばっちゃんで3つ?」
「不正解」
「デン?」
「デンは食べないでしょ、正解は4個!」
「は?」
「うん」
「え?」
「ね」
「…………え!?」
うまく働かない思考回路をフル回転。
それって、つまり、そういうことか!?
3人しか居ない家に4個の林檎、近い未来に増える椅子。
[10回]
「ブレスレット?」
「お前、あんまり着けないなと思って」
「持ってないワケじゃないのよ」
「知ってる」
「いつも着けるには、ちょっと邪魔だし」
「じゃあ、やっぱりネックレスのチェーンか…」
「へ?」
数日後、君から貰った小さな石の付いたネックレス。
傷が付かないように、仕事の邪魔にならないように、指輪を外してくぐらせた。
小さな君の優しさが、嬉しくて、嬉しくて、くすぐったかった。
[10回]
「あ!」
「…あ?」
「エド、時間大丈夫?」
「時間…うお!!?」
「10時には出ないと間に合わないって言ってたよね」
「何でもう9時半になってんだ!!」
「そりゃ、目覚まし鳴らなかったから」
「無能にねちねち厭味言われる!!」
「顔くらい洗って行きなさいよ~、朝食は?」
「朝飯要らねぇ!いってきます!!」
「いってらっしゃーい」
あら、起こしてくれても良いだろとは言わないのね。
もしかしたら後で言われるかもしれないけど、
あたしも寝てたんだから仕方ないじゃない。
寝ぐせの付いた髪、慌てた後ろ姿にこぼれた笑みを噛み殺す。
[11回]
「見たの見られたの、エドは騒ぎすぎだと思うの」
「お前は騒がなさすぎだと思うの」
「あんただって、あたしの着替え見たことあるくせに」
「あれは不可抗力だ!!」
「ノックして入らないから、そういうことになるんですぅ」
「覗くつもりなんざ無かったよ!」
「不可抗力だって言うのなら普通、顔そらすとか、すぐに出て行くとか」
「し、仕方ない、だ、ろ」
「何が仕方ないのよ」
「…見たいって思わないワケ、ない、じゃんか」
それってつまり、見たいってこと?
だからって見せたらぎゃーぎゃー騒ぐくせに。
ちっとも分からない男心、境界線を越えたら少しは理解出来るかしら。
[9回]
「泡だらけ~」
「ちょっとウィンリィさん」
「はーい」
「オレ、今全裸なんですけど」
「知ってるわよ?」
「…髪洗うの楽しい?」
「ヒトの洗うのは楽しいわ、デン洗ってるみたい」
「オレはデンじゃない…」
「細かいこと言わないでよ」
「頼むから、風呂入ってるときに乱入するのはやめてくれ!」
「何で?」
「恥ずかしいから」
「嘘だぁ!」
「もうオレ、お婿に行けない」
「大丈夫大丈夫、あたしが貰ってあげるから」
シャワーを浴びていたら、突然開いた扉。
新しく買ったシャンプー片手に、洗ってあげると着ている服の袖を捲る。
彼女に裸でこられても困るけど、こっちが裸でも困るんだ!
最後の抵抗に腰にタオルを巻いてはみたものの、
結局されるがままにうなだれる。
[11回]
「あ、起きた」
「…なにやってんの、お前」
「エドが起きるの待ってたの」
「そこで?」
「ここで。あんた寝言言ってたわよ」
「げ、マジ?」
「そんで、コレ」
「コレ?」
「そう、コレ」
「…何でオレ、お前の手握ってんの?」
「そこはあたしが訊きたいとこなんだけど」
無意識に握ったにしては、しっかり握りすぎだと思うんだ。
お前も嫌ならさっさと振りほどけば良いだろ。
言ったら、別に嫌じゃなかったからの返事。
それはどういう意味なんだと、問いかける前に離れた手のひら。
[11回]